来年10月1日に予定される消費税率10%への引き上げまで、1年を切った。

 増税により、家計の負担が重くなるのは間違いない。一方で、医療や介護、年金、子育て支援など、増え続ける社会保障費への対応も避けて通れない課題である。

 税率10%は2015年10月から実施することになっていたが、安倍晋三首相は2度先送りした。3度目の延期はもう許されまい。

 政府は引き上げに向けた環境を整え、影響を最小限に抑える方策を着実に進めなければならない。

 その一つが、景気の腰折れを防ぐ対策だ。14年4月に8%に引き上げた際、駆け込み需要の反動で個人消費が大きく落ち込んだ経緯がある。

 政府は今年末に景気対策をまとめる方針で、住宅・自動車の購入支援など、数兆円規模に上る可能性があるという。万全を期すのは当然だが、予算が膨張するのでは本末転倒になる。不要な支出を紛れ込ませてはならない。

 低所得者対策で導入する軽減税率への対応も急がれる。とりわけ頭が痛いのが事業者だ。飲料・食料品の税率が持ち帰りと店内飲食で異なるようになり、レジの切り替えや従業員の教育が求められる。

 日本商工会議所の調査では8割超の中小企業が、まだ準備に取り掛かっていない。政府は補助金の活用などで後押ししてもらいたい。

 そもそも消費税率のアップは、12年の「社会保障と税の一体改革」で決まったものだ。社会保障制度を維持・充実させるため、安定財源を確保する目的で、政権与党だった旧民主党と、野党だった自民、公明両党が合意した。

 ただ、税率10%は、団塊の世代全員が75歳以上になる25年度に向けた措置だった。

 政府が今年5月に公表した推計によると、高齢者数がピークに近づく40年度の社会保障費は約190兆円と、18年度の1・5倍以上に膨らむ。公費負担は18年度より30兆円超も増える見込みで、さらなる財源確保に迫られるのは必至だ。

 安倍首相は、21年度までの3年間で「全世代型の社会保障改革」を断行すると打ち上げている。少子高齢化を最大の課題と位置付けるのはいいが、大切なのは「生涯現役社会」といった聞こえがいい言葉を並べるのではなく、社会保障を持続可能にする給付と負担の議論である。

 これまで首相が税率アップの延期を表明したのは、14年の衆院解散前と16年の参院選前で、いずれも目先の選挙をにらんだ面が強かった。

 負担の先送りは若い世代につけを回すことになる。政治的な思惑で痛みを伴う話から逃げていては、国民の将来不安も解消できまい。

 逆進性が強い消費税は、所得の低い人ほど負担が重くなる。大企業や富裕層の優遇を改め、所得税や相続税、法人税などの見直しにも取り組むべきだ。