被害が社会問題化している職場のパワーハラスメント防止に向け、厚生労働省がようやく本腰を入れ始めた。

 企業に対し、パワハラ対策に取り組むよう法律で義務付け、就業規則などに対応措置を明記させる方針だ。

 法規制が実現すれば、取り組みの不十分な企業に労働局が行政指導を行い、是正勧告もできるようになる。これにより、一定の抑止効果は期待できるだろう。

 厚労省は年内にも法規制の内容をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出するとしている。

 これまで手付かずだったパワハラ対策の法制化である。立場の弱い労働者が自殺やうつ病といった悲惨な状況に追い込まれないよう、厚労省は実効性のある仕組みを整えなければならない。

 全国の労働局に寄せられる相談内容のうち、職場の「いじめ・嫌がらせ」に関する件数は増加の一途で、2012年度以降は「解雇」や「賃金などの労働条件」を上回って最多となっている。16年度の相談件数は7万件を超えているのが実態だ。

 国際労働機関(ILO)は来年中にもあらゆるハラスメントを禁止する条約を採択する予定だ。日本政府も、初の国際基準にしっかりと対応していく必要がある。

 パワハラのない職場環境づくりは、政府が進める働き方改革の大前提であり、企業の責務でもある。

 各企業も法規制を待つことなく、パワハラ事案が発覚した場合の対応方針やプライバシーの保護策など、社内体制を整備してもらいたい。

 残念なのは、労働側が対策の柱に位置付けるよう求めていた「パワハラ行為自体の禁止」が見送られたことだ。経営側が「業務の遂行に必要な指導とパワハラとの線引きが難しい」と主張し、労使間で意見が対立している。

 とはいえ、パワハラ行為をするのは個人であり、企業が取り組みを進めるだけでは限界があるだろう。

 英国やフランスでは、加害者本人に刑事罰を科す仕組みを設けている。より効果的な防止策を整えるためにも、パワハラ行為自体の禁止について、引き続き労使で議論を重ねてほしい。

 肝心なのは、法規制に基づく指針の中で、パワハラの定義や企業の対応方針を明確に示すことだ。厚労省は、パワハラに当たる行為を具体的に分かりやすくまとめるなどして、企業の取り組みを後押ししてもらいたい。

 さらに「カスタマーハラスメント」と呼ばれる、顧客や取引先などからの悪質なクレームに関しても、職場のパワハラに類するものと捉え、適切な対応基準を定めておく必要がある。被害を相談した人が解雇などの不利益を受けないよう、法律で禁止する措置も忘れてはならない。

 法規制を機能させるためには、中小企業への支援策や経過措置も欠かせない。