理工系女子なぜ少ない?

 日本の大学で理工系を専攻する女子は極めて少なく、割合は先進国で最低レベルだ。中学時代に女子の理科への関心が低下することや職業上のロールモデルの少なさなど、さまざまな要因が指摘されている。そもそもの背景として、みなさんの心の中にはないだろうか。「女子は文系」という思い込み。社会に張り巡らされたそんなジェンダーバイアスが、個人の進路を狭めていないか。

「女子は文系」偏見根強く

 「不思議!」「溶けてる」。徳島大学常三島キャンパスの実験室で女子中高生の声が響く。1月21日に開かれた理工系分野への進学を啓発するイベント「理系女子♡コラボ未来プロジェクト」の一場面だ。ミカンの皮に含まれるオイルを発泡スチロールにかけて溶かし、スタンプを作る実験をした。

主催したのは徳島大、阿南高専、大阪大大学院工学研究科の3機関。女子中高生やその保護者ら約50人が参加した。女性の理系研究者らの講演や意見交換会もあった。

近年、国内の大学などは女子中高生を対象に、理工系への進学を促すイベントを盛んに開いている。複数の調査によって、女子の理科への関心は中学時代に低下することが明らかになっており、この時期の女子にアピールすることで理科離れを食い止めようとしている。

大学学部ではどれくらいの女子が理工系を専攻するのか。2017年度の学校基本調査によると、工学、理学専攻者における女子の割合は、それぞれ15%、27%にとどまる≪図参照≫。同じ理系でも、資格が取れる医歯薬分野では女子の進出が進んでいる。経済協力開発機構(OECD)による15年の調査をみると、日本の工学専攻入学者の女子の割合は13%で、加盟国の中で最低だった。


県内の高等教育機関でも傾向は同様だ。徳島大理工学部(昼間・夜間主コース)の1年生646人のうち、女子は64人と約10%。阿南高専本科は1年生160人のうち女子は28人で約18%だ。

■家族の理解重要

なぜ理工系に進学する女子は少ないのか。「未来プロジェクト」を企画した研究者は周囲からの影響を指摘する。小松満男・大阪大名誉教授(工学)は「『なぜ女子なのに数学を専攻?』などと周囲の大人に言われる。世の中全体に、性別に関わるバイアスがある」と指摘。「保護者に理解を深めてもらい、社会のバイアスから子どもを守ってほしい」と話す。

上手洋子・徳島大准教授(工学)は「身近に理系の仕事をしている人がいるかどうかが女子の文理選択に大きく影響しているようだ。進路のイメージが湧けば理工系進学のハードルが下がる」と言う。加えて、理工系学部進学後も「保護者の同意が得られず、大学院進学を断念するケースも、女子には見られる」と家族による理解の重要性を強調する。

学校外で開かれる啓発イベントの参加者は理科に一定の興味がある女子に限られる。理科に関心が低い女子生徒にその面白さを伝えるには、「小中学校の理科授業自体が、どうすれば女子に魅力的に映るかを考える必要がある」と指摘するのは、女子の科学教育に詳しい稲田結美・日本体育大准教授(教育学)だ。

■学校教材に偏り

性別役割意識は社会に深く根付き、女子と男子を取り巻く状況は生まれた時から異なる。例えば、おもちゃ売り場に行くと、男児向けにはプラモデルやブロック、女児向けには人形やままごとセットが並ぶ。「女子は女の子らしく」という社会規範も強い。

中学校の理科の授業では、力学台車や機械が題材として登場する。「一般的に、女子は男子ほどこれらになじみがなく、結果、理科への魅力を感じにくくなる。教材自体もジェンダーの視点から偏りがないかを考えてほしい」と稲田准教授は言う。また、理科の実験中の女子は記録する側に回りがちになるなど、消極性を指摘する研究もある。

英国など欧米諸国では、理科教育が男女にとって魅力的なものになるよう、ジェンダーの視点を取り入れる必要性が社会で認識されているという。

ドイツでは、中学校の理科授業で女子の興味を喚起するための指針を盛り込んだ指導事例集が発行されている。例えば「力と速さ」の単元では、機械ではなく、男女ともになじみのある「自転車に乗る際のヘルメット」を題材に、速さと衝突時の衝撃(危険性)との関係を教えるといった指導例が紹介されている。

日本では「生徒は個人としてみなす」という考えから、ジェンダーへの配慮という視点から授業を改善しようとする動きは鈍い。徳島県教委義務教育担当も「教育現場では『男女』という区別で生徒を見ていない。個人に応じた教育、進路指導をしている」という見解を示す。

一方で、稲田准教授は言う。「『個』も重要だが、社会が望む女性像により、『個』が抑制されたり、方向付けられたりしていないだろうか。ポジティブアクションと同様、(機械に触れる経験が少ないなど)過去にマイナスを被っている対象者がいる場合は、それを補うことで公平を実現できるのではないか」。

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