【上】試合開始前、大杉漣さんの冥福を祈り黙とうする両チームの選手たち【中】ヴォルティスベンチに置かれた大杉漣さん用の特製ユニフォーム【下】「漣さんと共に」のメッセージを掲げ応援する=鳴門ポカリスエットスタジアム

 天国の大杉漣さんに勝利を届けることはできなかった-。25日、鳴門ポカリスエットスタジアムで行われたサッカーJ2徳島ヴォルティスの今季開幕戦では、チームを愛し、21日に急死した大杉さんの分も応援しようと8753人のサポーターが声をからした。しかし、J1復帰へ弾みをつけることができず、ため息が漏れた。

 キックオフの前に来場者全員で黙とうをささげた。「漣さんに手向けの白星を」。サポーターと同じ思いでピッチに立った選手は喪章を左腕に巻き、「REN」の名前が入った背番号10のユニホームをベンチに飾って試合に臨んだ。

 ところが、序盤からファジアーノ岡山のプレスに苦しめられ、前半27分に失点。観客から悲鳴が上がった。

 大杉さんがいつも観戦していたメインスタンド北側の自由席では、城北高サッカー部時代の後輩村岡英治さん(64)=県サッカー協会専務理事=が大杉さんの写真を手に試合を見守った。「大杉さんは『観客の心を打つプレーを見たい』といつも言っていた。まだまだいける。熱いプレーを見せてやって」

 後半はヴォルティスの攻撃にリズムが生まれる。30分にはクラブ史上最年少の17歳でMF藤原志龍選手=生光学園高2年=が出場し、スタジアムが沸いた。

 夢の舞台に立ち、得意のドリブルで勇敢に切り込む藤原選手の姿に、父義光さん(45)=北島町北村、飲食業=は涙を流し、弟優志さん(13)=北島中2年=も「行けー」と声援を送った。

 最後はGK梶川裕嗣選手まで攻め上がったが、ゴールを奪うことはできなかった。「漣さんと共に」と書いた旗を掲げていた東川悟さん(35)=徳島市国府町、アルバイト従業員=は「厳しい結果だが、まだ始まったばかり。最後にはJ1に昇格して笑えるようになっていたら」

 ヴォルティスの岩尾憲主将は「格好をつけられず残念。天国から見てくれた漣さんに怒られるかも。次こそ恩返しができるようしっかり準備していく」と巻き返しを誓った。