市民の生活を支える脇町潜水橋。幅は狭く、車は対向できない=美馬市

自然と調和風情醸す 写真愛好家らを魅了

 徳島県北部を横断するように悠然と流れる吉野川。農業、林業、そして江戸期最大の産業だ

った藍の発展に大きな影響を与えた。美馬市脇町には、藍で財産を築いた豪商による住宅や倉庫が残る。富の象徴として連なるように設けられた屋根の防火壁は、うだつの町並みとして観光客を集める。

町並みがある美馬市脇町の中心部と、吉野川対岸の同市穴吹町三島をつなぐのが脇町潜水橋だ。

1961年の建設で長さは207メートル。幅は3・6メートルと狭いが、市民の通勤や通学、買い物などに欠かせない。脇町劇場を舞台とした映画「虹をつかむ男」(1996年)のエンディングを飾るなど、風情ある情景として親しまれている。

夕日と山、川、潜水橋が一つに収まる構図は、写真愛好家にとって格好の標的。脇町側の土手には、夕暮れ時のシャッターチャンスを待ち続ける姿が見られる。

常連のカメラマンに声を掛け、お気に入りの写真を紹介してもらった。

同市脇町田上、主婦藤本英子さん(69)は写真歴15年。ほぼ毎日、自宅から空を眺め、雲の様子が気に入れば潜水橋へ急ぐ。

「春は菜の花、夏はシラサギや釣り人、秋は夕日、冬は川霧。一年中撮影できる」。オレンジに染まる雲、宵闇が迫る空のブルー、山裾と潜水橋の黒と、色が3層に重なった一枚を見せてくれた。

空の青、雲のオレンジ、山裾の黒が3層を成す夕暮れ時(藤本さん提供)

写真歴30年以上の三宅利道さん(62)=同市脇町拝原、測量士=は、潜水橋の上空に中秋の名月が浮かんだ写真が一押しだ。夜中に輝く月と、川に反射する光を30秒ほどの露光で収めた。

夜明け前、橋の上で輝く月(三宅さん提供)

雲の切れ間から夕日が空を染める景色を求め、9月末~10月半ばはほぼ毎日撮影に向かう。「潜水橋の向こうに見える鉄塔の真後ろに、日が沈む写真が撮れる」と笑顔を見せる。

10年ほど前から潜水橋の写真を撮影している森本明美さん(63)=同市脇町曽江名、主婦=は、9月中旬から10月上旬の日没前後の半時間ほどがお勧めだと言う。潜水橋の上で自転車や車が行き交う時を狙ってシャッターを切る。「少し暗めに調整して撮影すれば、どこか寂しげで落ち着いた雰囲気になる」

この10年、景色はほとんど変わっていないとか。森本さんは「いつまでもこのままの風景で残ってほしい」と願う。山、川、豊かな自然に囲まれているからこそ絵になる。市民に見守られている橋もまた、市民の暮らしを見守っているのかもしれない。