過激派「イスラム国」を名乗るグループの人質になっていたフリージャーナリスト後藤健二さんが殺害されたとみられる映像が、インターネット上で公開された。
 
 同じく人質だった湯川遥菜(はるな)さんも既に殺害されたとみられており、邦人被害者は2人になった。
 
 後藤さんは紛争地域での取材経験が豊かで、女性や子どもら弱者に寄り添った報道姿勢は内外で高く評価されていた。妻と幼い娘2人がおり、その無念さは察するに余りある。家族らの心痛はいかばかりか。
 
 卑劣なテロを断じて許してはならない。
 
 犯行グループは日本人攻撃の理由として、安倍晋三首相が表明した「イスラム国と闘う周辺国」への2億ドル(約235億円)の支援を挙げた。
 
 日本政府が「人道支援だ」といくら訴えても、耳を貸そうとせずに、一方的に敵意を募らせた。映像で、黒ずくめの覆面男は今後も日本人を標的にすると脅迫している。
 
 イスラム国を支持したり、主張に共感したりする過激な勢力は中東に限らず各地に少なからず存在する。
 
 政府は、在外邦人の安全確保や国内でのテロ対策の徹底を急がなければならない。
 
 なぜ、最悪の事態を招いたのか。政府には、今回の事件を徹底的に検証する姿勢が求められる。
 
 首相は犯行を非難する際に「罪を償わせる」と述べた。怒りの強さを訴えたかったのだろうが、あたかも欧米の指導者が軍事力を行使する際に使うような表現である。
 
 犯行グループを挑発しかねない言い回しを、この状況であえて使うのは賢明ではない。新たな攻撃の口実にされかねず、国際的に誤解を与える恐れもある。
 
 欧米諸国は空爆などで、イスラム国の弱体化を図っているが、過激思想に共鳴する若者は後を絶たない。
 
 日本は食料、医療など人道支援で国際社会に貢献したい。武力行使する欧米とは明確な一線を引き、中東の人々に日本の姿勢をきちんと伝えることが大事だ。
 
 若者をテロに駆り立てる貧困や差別撤廃に向け、日本は先頭に立って取り組みたい。
 
 頻発するテロによって、善良なイスラム教徒への偏見が広がることは避けなければならない。
 
 人質事件で、ヨルダンをはじめ多くの国が寄せてくれた支援に感謝したい。イスラム国に捕らわれているヨルダン人パイロット、モアズ・カサスベ中尉の無事解放を祈る。
 
 中東諸国から寄せられた励ましで、親日家の多さを実感した。戦後日本の平和外交や企業活動が築き上げてきた掛け替えのない財産である。平和国家としての信頼を一層深める努力をしたい。
 
 今国会には、安全保障法制の関連法案が提出される。今回の事件を踏まえて、安全保障や外交の在り方を徹底的に議論する必要がさらに高まったといえる。
 
 首相は集団的自衛権行使容認を受けて、自衛隊の海外での任務拡大を目指しているが、万が一にも他国の紛争に巻き込まれないように、国会で問題を掘り下げなければならない。
 
 日本ならではの国際社会への貢献の在り方について議論を深め、いま一度、国民の前に示してもらいたい。