厚生労働省が、外国人技能実習制度の対象職種に介護分野を加える方針を決めた。
 
 名目は、高度化した日本の介護技術を海外に移転するというものだ。しかし、介護現場の人員不足を安価な労働力で穴埋めしようとの狙いが透けて見える。
 
 人口減少が続く中、外国人の力を借りて人手不足を補う必要性は高まっているが、実習制度を安易に拡大するやり方は疑問である。
 
 厚労省は新年度中の職種追加を目指し、2016年度に受け入れを始めたい考えだ。関連法案は通常国会に提出される。国会でしっかりと議論するよう求めたい。
 
 実習制度は発展途上国などを対象に、日本で最長3年間働き、習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらう目的で、1993年度に導入された。農業や製造業などの分野で69職種が認められており、介護が加われば対人サービスで初めてとなる。
 
 実習生は13年末で約15万5千人、徳島県内には約2千人がいる。
 
 介護現場は慢性的に人員確保が難しく、外国人の積極的な受け入れを求める声があるのは確かだ。厚労省は団塊の世代が75歳以上になる25年度に、介護職員が約30万人不足すると推計している。
 
 そうした事情があるとはいえ、実習制度を利用するのは問題がある。
 
 制度をめぐっては、劣悪な環境で厳しい労働をさせたり、賃金を払わなかったりするトラブルが後を絶たない。技術移転や人材育成という本来の趣旨とは違い、安い働き手として利用する例も少なくない。
 
 米国務省が「強制労働」と批判するなど、海外からも厳しい目が注がれている。人権を軽視した扱いは、日本の信用を損ねることにもつながっている。
 
 政府は新成長戦略で対象職種の追加を検討するとしているが、見直すべきだ。
 
 実習生が介護分野に参入すれば、日本人介護職員の給与が低下する恐れもある。
 
 介護職員の人手不足は、収入の低さが要因の一つとなっている。平均給与は全産業の平均より月額で約10万円も低く、離職率も高い。
 
 急がなければならないのは日本人職員の待遇改善である。新年度の介護報酬改定で介護職員の収入アップ策が盛り込まれたが、さらに加速させる必要がある。
 
 介護分野での外国人労働者は実習制度とは別に、08年度から経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアなど3カ国から受け入れている。
 
 日本の国家資格を取得し、長く働いてもらうのが狙いだが、日本語の習得などがネックとなり、来日した約1500人のうち合格者は約240人にとどまっている。
 
 質を落としてはいけないが、意欲を持って来日し、経験を積んだ外国人を帰すのはもったいない。試験の在り方には改善の余地があろう。
 
 政府は実習制度への批判を受けて、監督機関を新設し、不正監視や実習生保護を強化する方針を打ち出している。
 
 対策を講じるのは当然だが、短期間の実習を増やすのではなく、EPAも含めて、長期的に働ける仕組みが必要だろう。人権が保障され、日本語教育や技術研修がきちんと受けられる制度を整えるべきである。