東京電力は福島第1原発構内のタンクに保管している高濃度汚染水の本年度内の全量浄化処理を断念した。

 浄化作業の中核を担う多核種除去設備(ALPS)が不調で、処理量が想定の6割程度にとどまっているためだ。

 処理の遅れは今後の廃炉作業に影響を及ぼしかねず、何よりも復興の妨げとなる。東電は想定通り進まなかった要因を洗い出して、確実に処理を進めなければならない。

 本年度内の処理は、安倍晋三首相が東京五輪の招致演説で「状況はコントロールされている」と述べたことを受け、東電が表明した。国際公約化しており、政府や首相の責任も重い。

 これまでにALPSで処理した汚染水は約28万トンで、ほぼ同量がタンクに残っている。

 核燃料を冷やすために注入した水が建屋地下にたまり続けている。さらに地下水が流れ込むなどして、毎日新たに汚染水約400トンを生んでいる。

 ALPSはトリチウム以外の放射性物質62種類を除去できる。処理が順調に進んでも、トリチウムを含んだ大量の水をどうするのかという問題が残る。

 処理後の水を希釈して海洋放出する案も出ているが、漁業関係者らは強く反発している。当然だろう。

 対策の柱に位置付けられる「凍土遮水壁」は、世界初の試みであり、効果は未知数だ。さらに、作業員の死亡事故により、当初予定の来月末の運用開始に黄信号がともっているのも気掛かりだ。

 事故から間もなく4年になるが、汚染水処理の決め手は見いだせていない。技術的に難問ばかりで、東電主体の対応では限界がある。政府は収束に向けて関与を一層強めるべきだ。