今通常国会を「改革断行国会」と位置付ける安倍晋三首相の施政方針演説からは、さまざまな分野への改革の意気込みが感じられた。昨年12月の衆院選に大勝し、課題対処に自信を深めたようだ。
 
 経済再生、復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍、外交・安全保障の立て直し-。首相はこれらの課題を列挙し「『戦後以来の大改革』に、力強く踏み出そう」と呼び掛けた。
 
 まず、触れたのは「農政の大改革」である。首相は農業人口の大幅な減少や高齢化を挙げ、「農家の所得を増やすための改革を進める」との決意を表明。農協法に基づく現行の中央会制度の廃止などに取り組む考えを示した。
 
 環太平洋連携協定(TPP)交渉は大詰めを迎えており、農業の競争力強化は急務だ。だが、地方の農業も守らなければならない。改革の方向性に問題はないか、論議を深めてほしい。
 
 産業基盤である電力システムの改革では、送配電ネットワークを分離するとし「低廉で安定した電力供給は、日本経済の生命線だ」と訴えた。
 
 岩盤規制を突き崩そうという首相の姿勢を、国民生活向上につなげることが大事だ。
 
 気に掛かるのは、首相が推し進めるアベノミクスによる景気回復の行方である。
 
 首相は、消費税率10%への引き上げ延期や賃上げの継続で「経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを同時に達成していく」と約束した。
 
 だが、労働者の実質賃金は下がり、アベノミクスの地方への波及は遅れている。
 
 そこで問われるのが地方振興策である。首相は地方創生をめぐり、地方で就職する学生の奨学金の返済を免除する仕組みづくりや、本社などの地方移転支援を挙げた。
 
 地方分権で、霞が関主導を改め、「地方の発意による、地方のための改革を進めていく」という姿勢は歓迎する。
 
 地方再生策が実を結ぶよう、国と地方が努力を重ねていきたい。
 
 昨年12月、徳島県西部で起きた大雪被害と集落の孤立に首相は関心を寄せた。「災害派遣された自衛隊員に、地元の中学校の子どもたちが手紙をくれた」として、自衛隊員への感謝をつづった手紙の一節を紹介したのだ。
 
 戦後70年の節目の今国会は集団的自衛権の行使容認を受けた安全保障法制の整備が、論戦の大きなテーマである。
 
 首相は「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めていく」との決意は示したが、集団的自衛権問題の深入りは避けた。憲法改正についても「国民的な議論を深めていこう」などと話すにとどめた。
 
 公明党や統一地方選への配慮がうかがえたが、自らの考えを率直に語るべきだ。
 
 冒頭で、首相は「イスラム国」による邦人殺害事件を非難し「テロと戦う国際社会において、日本としての責任を毅然として果たす」と、テロに屈しない姿勢を強調した。一方で、首相は「平和国家としての歩みは、決して変わることはない」とも明言した。
 
 集団的自衛権の行使容認とテロ対策を含めた自衛隊の任務拡大が、平和国家の在り方にどんな影響を与えるのか、国民は注目している。
 
 16日からの代表質問で、安全保障問題を掘り下げてもらいたい。