全国で危険ドラッグ使用による健康被害や事件事故が後を絶たない事態を受け、徳島県は規制強化に向けて「薬物の濫用(らんよう)の防止に関する条例」の改正案を県議会2月定例会に提出した。来月の閉会日に可決される見通しである。
 
 改正案は、健康被害を及ぼす恐れのある危険ドラッグを、成分を特定せずに「危険薬物」として包括的に規制できるのが特徴だ。
 
 薬物乱用は使用者の健康をむしばむだけでなく、傷害事件や交通事故を引き起こして、周囲も巻き込む危険性がある。
 
 規制を強化するのは当然だろう。
 
 危険ドラッグをめぐっては、使用が原因と疑われる死者が昨年、全国で100人を超えている。昨年1~11月に全国の警察が危険ドラッグ絡みで摘発したのは計725人で、前年1年分の約4倍という急増ぶりだ。県内では昨年、使用や所持で5人が摘発された。
 
 国は有害な化学物質を特定し、薬事法で規制してきた。徳島を含む一部の自治体も物質を特定した上で「知事指定薬物」としてきた。
 
 しかし、特定に時間がかかる上、規制してもわずかに成分が異なる新製品がすぐ発売されるいたちごっこが続いている。いかに素早く規制の網をかけるかが、取り締まる側の課題だった。
 
 そうした中、鳥取県や兵庫県などで成分を特定せずに規制できる条例を制定する動きが広がった。
 
 その結果、インターネットの販売業者が規制地域を発送先から除外したり、専門店が撤退したりする動きも見られる。一方、条例がない地域や規制が緩い地域を狙う業者も現れている。
 
 条例改正により本県も規制が強まれば、販売業者をけん制するとともに、県内の使用者にも抑止効果が働くのは間違いない。
 
 しかし、改正案には課題もある。
 
 成分を特定せずに指定できるのは長所でもあるが、一方で恣(し)意(い)的運用の危険をはらんでいることを、忘れてはならない。
 
 条例では、危険薬物を「人の健康に危害が生じるおそれがある」と定義しているが、あまりにも曖昧だ。また、恐れの有る無しの判断は、県がするのか、それとも取り締まる県警なのかも、まだ決まっていない。
 
 条例には、2年以下の懲役や100万円以下の罰金などの罰則も盛り込まれている。
 
 県や県警は、慎重な運用を心掛けなければならない。
 
 一方、県議会には、適正に運用されているかどうか、定期的にチェックする姿勢が求められる。
 
 国も昨年11月、薬事法を医薬品法に改正して、取り締まりを強化した。
 
 包囲網が狭まる中、かつて全国に200以上あった販売店は昨年末時点で5店舗と激減している。摘発を恐れて、ネットや宅配に切り替えたためだ。
 
 国や自治体の規制が強まれば、ネットなど外部からは分かりにくい取引形態に移っていくだろう。
 
 危険ドラッグを根絶するには、規制だけでは限界がある。条例改正による取り締まり強化と併せて、薬物の恐ろしさを教える教育、啓発に力を注ぐべきだ。