防衛省が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先としている名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向け、海底ボーリング調査を再開した。
 
 地元が反対する中での強行である。翁長雄志(おながたけし)知事をはじめ、県民が反発を強めるのは当然だろう。
 
 強引なやり方は、沖縄との溝を深めるだけだ。政府は対決姿勢を際立たせるのではなく、翁長知事らとの対話を始めるべきである。
 
 調査は地盤の強度や地質を調べ、飛行場の設計に反映させるためのものだ。
 
 昨年8月に始め、12カ所で完了したが、9月中旬から、悪天候や知事選への影響を考慮して中断していた。
 
 今回の再開に、翁長知事は「大変遺憾だ。あらゆる手法を駆使し、辺野古に基地をつくらせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と憤った。
 
 今年1月には、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会を設け、検証中はボーリング調査を見合わせるよう防衛省に求めたばかりである。
 
 これに対し、菅義偉官房長官は「知事が代わったことで(埋め立て承認を)取り消すことはできない。粛々と進めていきたい」と語り、配慮するそぶりすら見せていない。
 
 政府の中には「手続きや工事が進めば、できたものはしょうがないという声も出てくる。県民世論も変わり得る」との見方があるという。
 
 既成事実を積み重ね、力で押さえつければ、反対運動はやがて下火になると見込んでいるのだろう。
 
 中谷元・防衛相は、夏ごろにも埋め立て工事に着手したいとの意向を示している。
 
 しかし、楽観的に過ぎるのではないか。
 
 沖縄では、移設計画が最大の争点となった昨年1月の名護市長選に続き、11月の知事選、12月の衆院選の沖縄4小選挙区全てで、辺野古反対派が勝っている。
 
 民意は明確であり、それを無視して推し進めるのは、怒りの火に油を注ぐようなものだ。反対の県民世論は一層高まろう。
 
 安倍晋三首相は、今年2月に行った施政方針演説で「引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、辺野古沖への移設を進めていく」と述べている。
 
 だが、翁長知事がこれまで7度上京したにもかかわらず、一度も会おうとしないのはどうしたことか。沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅長官も同様だ。
 
 さらに、「普天間飛行場負担軽減推進会議」も翁長知事の就任以来、開かれないままになっている。

 沖縄の米軍基地負担問題について、首相や関係閣僚が地元首長と協議する会合であり、前知事時代は、事務レベルの作業部会を含めると毎月開かれていた。
 
 知事選の意趣返し、沖縄いじめとも取れるやり方に、県民からは「露骨な嫌がらせだ」との批判が出ている。
 
 異論に耳を傾けず、意に沿わない人は排除する。そんな対応で理解が得られるわけがない。
 
 世界一危険とされる普天間飛行場を、固定化させてはならない。政府は、辺野古移設が「唯一の解決策」だというのなら、沖縄と話し合いの場を持ち、その理由をきちんと説明すべきである。