食品が体にどのように良いのかを、国の許可なしで表示できる「機能性表示食品制度」が、来月1日から導入される。
 
 業者は消費者庁に表示内容などを届けてから、60日後には販売できるようになる。
 
 「目や鼻の調子を整える茶葉」「骨の健康が気になる方に適したミカン」といった効能を記した商品が、今夏にも店先に並ぶ見通しだ。
 
 安倍政権の成長戦略の一つで、規制緩和により年間売り上げ2兆円ともいわれる健康食品市場の拡大に期待が寄せられている。
 
 だが、健康食品をめぐるトラブルや食品の産地偽装が後を絶たない現状を考えれば、制度が悪用される恐れは否定できない。
 
 実施に当たり、政府は消費者保護に細心の注意を払ってもらいたい。
 
 新制度は健康維持と増進の効能について表示できる。「肝臓の働きを助けます」など、体の特定部位への効果も書いてよい。
 
 だが、「肉体改造」「美白」などと健康維持の範囲を超えたり、「糖尿病の人に」といった病気の予防・治療に有効と思わせたりする表現は認められない。
 
 アルコール類を除く、全ての食品が対象となる。
 
 届け出は、臨床研究結果や論文など、表示の科学的根拠となるものを消費者庁に提出すればよい。
 
 業者任せともいえる仕組みに、消費者団体は「不確かな根拠で効果をうたう業者が現れるのではないか」と警戒を強めている。不安を感じるのは当然だろう。
 
 企業の責任で効能を表示できる同様の制度がある米国では、保健福祉省が127品を調査したところ、人体への影響を記した根拠資料全てで不備が見つかっている。
 
 不正対策として、消費者庁は小売店などで販売されている商品を買い取り、抜き打ち検査する方針だ。厳しくチェックしてもらいたい。
 
 業者が提出した資料をホームページで公開するとしている。「多くの目で根拠が正しいか監視する」(同庁幹部)との狙いからだ。
 
 消費者は専門知識や情報量で、業者と比べて不利な立場にある。適正かどうかの判断を消費者に委ねるような姿勢では、国の責任を果たしたとは言えまい。
 
 健康食品の表示制度には、消費者庁が許可する特定保健用食品(トクホ)と、ビタミンとミネラルの機能に限った栄養機能食品がある。
 
 根拠なしに効果をうたう、いわゆる「健康食品」の氾濫を防ぐために設けられたトクホは、審査に費用や時間がかかり、小規模な業者は利用しづらいと指摘されてきた。
 
 新制度を活用すれば負担は軽くなるが、業者側の事情ばかりを優先してはいないだろうか。
 
 食品行政においては、安全性の確保が何よりも重要である。間違っても健康被害を引き起こしてはならない。
 
 効能をうたう点は、新制度もトクホも同じだ。新制度の容器には「消費者庁長官の個別審査を受けたものではない」と明記されるが、消費者には区別がつきにくい。
 
 混乱が生じないように、十分な周知が必要だ。
 
 消費者も表示内容をきちんと確認するなど、注意深く対応したい。