内戦状態にあるイエメンの混乱に、一層拍車を掛けるのではないか。憂慮すべき事態である。

 イエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ派」に対して、サウジアラビアが主導する中東のスンニ派諸国が、空爆による軍事介入に踏み切った。
 
 フーシ派の攻勢で政権崩壊の瀬戸際に追い込まれ、サウジへ脱出したハディ暫定大統領が要請したためだ。
 
 サウジは当初、攻撃は限定的としていたが、開始から10日が過ぎた。
 
 ハディ氏が「暫定首都」と定める南部アデンでは、一進一退の攻防が続いているもようで、サウジ軍の地上部隊投入も取り沙汰され、長期化の懸念が強まっている。

 このままでは、内戦が泥沼化しているシリアや分裂状態のリビアと同じ状況に陥りかねない。

 多数の市民が犠牲となっている。事態のこれ以上の悪化は避けなければならない。

 アラビア半島南西部に位置するイエメンでは、中東民主化運動「アラブの春」で長期独裁体制を敷いていたサレハ前大統領が2012年に退陣。新たな体制づくりをめぐってハディ氏らと対立したフーシ派が、首都サヌアを制圧し、ことし2月に事実上のクーデターにより政権掌握を一方的に宣言した。

 フーシ派はシーア派の大国イランの支援を受けている。一方、サウジはイランと対立しており、隣国でのフーシ派の台頭は自国の安全を脅かすと警戒を強めていた。

 サウジはイエメンの安定が確保されるまで介入を続けると一歩も引かない姿勢だ。一方のイランは「地域に緊張をもたらす」と非難を強めており、シーア派主導の連立政権を組むイラクもサウジの介入をけん制している。

 イエメン一国にとどまらず周辺諸国を巻き込んでのスンニ派対シーア派という宗派間抗争の色彩も帯びている。

 不安定な中東において、両派の対立をエスカレートさせては、取り返しのつかない事態を招く恐れがある。サウジ、イラン両国には自制を強く求めたい。

 前大統領のサレハ氏が復権を画策して、かつて弾圧したフーシ派と連携しているのも、状況を複雑にしている。

 さらに、無政府状態の混乱に乗じて、南部に拠点を構える国際テロ組織「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」が、活動を活発化させている。先日も刑務所を襲撃してAQAP幹部ら300人以上の受刑者を脱獄させた。

 放置すれば、テロの温床が拡大するばかりである。

 イエメンは世界的な海上交通の要衝であり、混乱が深まれば、世界経済に大きな影響を与える。

 対岸のアフリカ東部のジブチには、海賊対処活動を続ける自衛隊の拠点もある。

 手遅れにならないよう、国際社会は収拾に向けて努力を尽くすべきだ。