北朝鮮が今月初め、拉致問題の再調査などに関する日朝政府間協議の中断を示唆する通知文を、送りつけてきた。

 日本政府が経済制裁の2年間延長を決定するなど、北朝鮮への圧力を強める動きが先月末に相次いだ。

 こうした流れに対抗して、北朝鮮は、安倍晋三首相が拉致被害者家族と面会するタイミングを狙って揺さぶりを掛けてきたとみられる。

 約束した再調査の報告を先延ばしにした上に、協議中断をちらつかせる北朝鮮の不誠実な姿勢は容認できない。

 通知文では、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)議長宅への家宅捜索に触れ、「重大な政治的挑発」と批判している。

 だが、違法行為の疑いがあれば適正に捜査するのは当然だ。

 日朝両政府は昨年5月、再調査を開始することで合意し、北朝鮮は再調査を行う特別調査委員会を設置。日本は独自制裁の一部を解除した。

 しかし、政府間の公式協議は昨年10月に日本政府代表団が平壌を訪問して以降途絶えたままで、昨年秋の予定だった初回報告はめどさえ立っていない。

 非難されるべきは、制裁の一部解除という実利を得ながら拉致被害者の安否情報すら伝えてこない北朝鮮の方だ。

 北朝鮮は速やかに調査結果を報告しなければならない。

 米韓との対立や中国との関係冷却が続く北朝鮮にとって、日本との交渉継続が孤立回避に重要なカードである状況に変わりはない。

 北朝鮮が約束を守らないのであれば、政府は独自制裁の復活も検討する必要があろう。

 被害者家族の高齢化が進んでいる。早期解決に向け、政府はあらゆる手段を講じるべきだ。