小学生が蹴ったサッカーボールに起因するバイクの転倒事故をめぐり、親の賠償責任が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁が被害者側の賠償請求を棄却した。「危険ではない通常の行為で、予測できずにたまたま人を死傷させた場合、親は責任を負わない」とする初の判断である。

 民法は、責任能力がない子どもや知的障害者らが他人に損害を与えた場合、監督を怠った親らが賠償責任を負うと定めている。一方で、監督義務を怠ったとは言えない場合などは免責になると規定している。

 これまでの訴訟では、ほぼ無条件で親の賠償責任を認める判断が踏襲されてきた。

 この流れを変える今回の判決には大きな意味がある。今後の訴訟にも影響を与えるだろう。

 事故は2004年2月、愛媛県今治市で起きた。放課後の校庭で小学6年の男児がフリーキックの練習中、ゴールに向けて蹴ったボールが道路に出た。バイクに乗った80代の男性がボールをよけようとして転倒。寝たきりとなり約1年半後に肺炎で死亡した。

 遺族は男児と両親に賠償を求めて提訴した。

 一、二審は「蹴り方次第でボールが道路に飛び出すことは予測できた」と男児の過失を認定。男児に責任能力はなく、親権者である両親が監督義務を怠ったとして、監督責任を認め、両親に賠償を命じていた。

 最高裁は「校庭でのフリーキックは通常、危険がない。ボールが道路に出ることは珍しく、男児がわざわざ道路に向けて蹴ったわけでもない」と認定。両親が直接目の届かない状況でこうした事故は予測できず、監督義務を怠ったとは言えないと判断した。

 判決が、不明確だった監督責任の範囲に一定の基準を示したことも評価したい。一方で免責される具体例などは示されておらず、監督義務者が賠償責任を負うかどうかは、ケースに応じて裁判所が判断することになる。

 過去には、小学生2人がキャッチボール中、それたボールが別の小学生の胸に当たって死亡した事故で、地裁が2人の両親に計約6千万円の支払いを命じた例もある。

 ほかに、子どもが乗った自転車の事故や同級生へのいじめや暴行でも、親の監督義務違反が認められている。

 監督義務をめぐる争いは、子どもの親だけに限らない。

 最高裁では現在、愛知県大府市で認知症高齢者が起こした列車事故をめぐる訴訟が係争中だ。認知症の親らの世話をする家族は、いつ、どんな事故で賠償を求められるか分からない。

 高齢化社会の現状に鑑みても判決は画期的だ。

 今後の課題は、監督義務者が免責された場合、被害者の利益をどう守るかだ。誰も賠償しないのでは、被害者の立場がなくなる。新たな法的救済措置も含めて、議論を深める必要がある。