自衛隊の海外任務を一挙に拡大する安倍政権の安全保障政策により、日本の平和主義が変容することを危惧する。

 政府は安全保障法制に関する与党協議会に、安保関連法案の解釈基準を盛り込んだ政府統一見解を提示した。集団的自衛権行使を可能とする武力攻撃事態法改正など、今国会に提出する法案の主要条文とともに実質合意した。

 安倍政権は集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」や恒久法の新設で、平時から有事まで「切れ目なく」幅広い対応をするとしている。

 だが、さまざまな「事態」を盛り込んだ法制からは、自衛隊が他国の紛争に巻き込まれる懸念が拭えない。拙速な法整備は厳に慎むべきだ。

 主な事態は、日本の安全への切迫度が高い順に「武力攻撃事態」「存立危機事態」「重要影響事態」「国際平和共同対処事態」の四つだ。

 直接武力攻撃を受けるなどの「武力攻撃事態」は日本有事であり、首相の命令を受けて自衛隊が防衛出動するのは当然である。

 集団的自衛権行使に道を開くのが「存立危機事態」だ。「わが国と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」をいう。

 事態の認定基準は「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、規模などの要素を総合的に考慮し、国民が被ることとなる犠牲の深刻性などから客観的に判断する」とした。

 客観的判断には、あいまいさを残していないのか。行使の是非も含めて問い直すべきだ。国会の論点となろう。

 朝鮮半島有事を想定した周辺事態法の改正で定義される「重要影響事態」は、事実上の地理的制約である「周辺」の概念を削除。小渕恵三元首相の「中東やインド洋は想定されない」との答弁も継承しない。

 統一見解では「軍事的な観点をはじめ種々の観点から見た概念」とした。派遣地域の拡大に加え、幅広い事態で自衛隊が派遣される可能性があり、問題である。

 自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法の国際平和支援法案では、国際平和などのために他国軍の後方支援を行う「国際平和共同対処事態」を新設。与党協議は恒久法に基づく自衛隊派遣は、例外なく国会の事前承認を必要とすることを正式確認している。

 しかし、緊急時の事後承認を許容した「重要影響事態」との線引きは明確なのか。

 政府は関連法案を来月半ばに閣議決定し、国会に提出する。緊急性が高い法案については、早ければ成立から半年後をめどに施行する考えだ。

 聞き慣れない「事態」が並び、国民は戸惑わないか。

 矢継ぎ早に自衛隊が海外派遣され、死傷者が出る事態は断じてあってはならない。

 撤回を視野に、国会での徹底した論戦を求める。