江戸末期から明治期の製鉄所や造船所、炭鉱の遺構などによる「明治日本の産業革命遺産」が、世界文化遺産の登録に向けて大きく前進した。

 産業革命遺産は「軍艦島」の通称で知られる端島(はしま)炭坑(長崎市)など、岩手から鹿児島までの8県にまたがる23施設で構成される。

 国連育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が登録を勧告した。7月にドイツで開催される世界遺産委員会で正式に決まる見通しである。

 西洋の技術を改良して適合させ、わずか50年余りという短期間で産業化を達成した日本の近代化は特筆すべきもので、国際的に評価された意義は大きい。

 登録が決まれば、「富士山」「富岡製糸場と絹産業遺産群」に続き3年連続で、日本の世界文化遺産としては15件目となる。

 世界遺産の総数は既に千件を超えている。新規登録数を抑えたいユネスコの意向を読み取って、23施設をひとまとめにした政府の戦略が功を奏したと言えよう。

 だが、イコモスが指摘するように、保全管理には課題が多く残っている。

 特に軍艦島は、建物群の劣化が急速に進んでいる。保全には多額の費用が必要で、技術的にも問題を抱える。それ以外の施設でも、周辺のインフラ整備による景観悪化に対応を求められている。

 人類共通の財産を未来へ引き継ぐには、政府による資金や技術面での支援が不可欠である。地元自治体との協議を急ぎたい。

 八幡製鉄所(北九州市)や長崎造船所(長崎市)など稼働中の施設の公開も簡単ではない。所有する企業は安全面から、敷地内での見学に否定的だ。期間限定の公開など、知恵を絞る必要がある。

 最大の懸念は、世界遺産委の委員国である韓国が「朝鮮半島出身者を強制労働させた施設がある」と主張して、登録に反対していることだ。

 政府は、対象とする年代は韓国併合以前であり、強制労働が行われた時期と異なっていると反論している。

 政府は、韓国に丁寧に説明し、理解を得るよう努力しなければならない。一方、韓国にも冷静な対応を求めたい。

 ただし、日本の近代化の過程に光と影が混在した事実に目を背けてはならない。

 登録が実現すれば、単に人を集める観光地に終わらせることなく、各施設の歴史や文化を伝える取り組みに力を注いでもらいたい。

 徳島県関係では、「四国八十八カ所霊場と遍路道」と「鳴門の渦潮」が、世界遺産の登録を目指している。双方とも他県と共同で取り組んでおり、8県にまたがった今回のケースは大いに参考となるだろう。

 登録に欠かせないのは地元の熱意である。今回の勧告を契機に、県内でも機運を盛り上げたい。