相次ぐ高官の粛清は、いったい何を意味しているのか。北朝鮮内部の動きを注視しなければならない。

 北朝鮮の玄永哲(ヒョンヨンチョル)人民武力部長(国防相)が、反逆罪に問われ粛清されたもようだ。軍の射撃場で、高射機関銃を使って公開処刑されたという。

 韓国の情報機関、国家情報院が非公開の国会情報委員会で明らかにした。

 玄氏は金正恩(キムジョンウン)第1書記の側近で軍要職を歴任した実力者だったが、数回にわたり指示に従わなかったほか、軍の行事で居眠りしたためだとみられている。金第1書記の訪ロ準備での不手際を問われたとの見方もある。

 金氏が2012年4月に第1書記に就任して以来、叔父で事実上のナンバー2とされた張成沢(チャンソンテク)元国防副委員長を筆頭に、高官の粛清が続いている。国家情報院によると、これまでに処刑された幹部は計約70人にも上る。

 見せしめに粛清する「恐怖政治」が、北朝鮮国内で横行している実態があらためて浮き彫りになったと言える。

 重要なのは、この状況をどう分析するかである。

 恐怖による統治以外に手段がないほど権力基盤が揺らいでいる証拠なのか、それとも古参幹部を排除して体制を強化する過程の一こまなのか。専門家の間でも意見は分かれるが、決して安定しているとは言えまい。

 独裁体制下の権力中枢で何が起きているのかを、正確につかむのは至難の業だ。

 だが、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮の動向把握は、日本の安全保障の最重要課題である。

 政府は米国や韓国と協力して、情報分析を急がなければならない。

 一方で、北朝鮮の挑発的行動も顕著になっている。

 最も気掛かりなのは、朝鮮中央通信が報じた潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験だ。

 実戦配備には核弾頭を小型化する必要があり、4、5年先になる見込みだ。韓国の韓民求(ハンミング)国防相は「予想より速い速度で開発が進んでいる」と強い警戒感を示した。

 潜水艦からのミサイル発射の動きを事前に探知するのは難しく、東アジアの安全を脅かす存在となる。日米韓だけではなく、中国も懸念を表明したのは当然だ。

 北朝鮮によるSLBMを含む核・ミサイル開発は断じて認められない。開発を断念させるために、国際社会は圧力を強める必要がある。特に、日米韓の連携は重要である。

 しかし、歴史問題の影響で日韓関係はぎくしゃくしている。このため水中発射実験の際に、韓国が関連情報を日本に提供しなかったなど、安全保障分野での協力にも支障が出ている。

 「恐怖政治」を加速させる北朝鮮の動向は、ますます不透明さを増している。どのような事態にも対応できるように、日韓両国の連携構築が求められている。