原子力規制委員会が、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)について、安全対策が「新規制基準を満たしている」とする審査書案を了承、事実上合格とした。

 地元自治体の同意などが得られれば、今年中にも再稼働する見通しだ。

 審査合格は九州電力川内1、2号機(鹿児島県)と関西電力高浜3、4号機(福井県)に次いで3例目となる。

 しかし、新基準に適合したからといって、安全性が保証されたとは言い切れない。

 愛媛県民の間では、再稼働に否定的な意見が賛成を大きく上回っている。隣接する徳島県でも関心は高く、不安を抱く県民は少なくない。

 住民の理解を十分に得ないまま、再稼働に踏み切ることは認められない。拙速に手続きを進めないよう、政府と自治体に求めたい。

 伊方の審査で最大の課題となったのは、地震の揺れへの対策である。

 四電は当初、想定される揺れ(基準地震動)を最大加速度570ガルとした。だが、近くを走る断層帯の評価から、想定に不確実さが残ると規制委に指摘され、650ガルに引き上げた。

 このため、四電は事故対応拠点となる緊急時対策所を新設したほか、配管などの耐震補強作業を続けている。

 工事は今秋までに終わる予定だが、それで十分なのかどうか。

 新基準については、高浜の再稼働差し止めを決定した福井地裁が「緩やかに過ぎ、合理性がない」と断じている。その中で地裁は2005年以降、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)など全国の4原発で、5回にわたって基準地震動を超す地震が起きたと指摘した。

 想定を超える地震が来ないとは限らない。原発は、ひとたび重大事故を起こせば取り返しのつかないことになる。それは東京電力福島第1原発の現状を見ても明らかだ。

 事故が起きた際の避難計画を疑問視する声もある。愛媛県のシミュレーションでは、半径30キロ圏内に住む7市町の約13万人が圏外に出るには、最短で6時間以上もかかるからだ。

 原発は半島の付け根にあり、先端側の約5千人は海路での避難を強いられるが、津波で港湾が破壊されれば逃げられなくなる恐れがある。

 忘れてならないのは、多くの住民が伊方の再稼働に反対していることだ。

 昨年1月に、徳島新聞社など四国の4新聞社と共同通信社が合同で実施した世論調査で、本県は反対が56・7%と賛成の41・1%を上回った。

 さらに、地元の愛媛新聞社が今年2~3月に行った調査では、反対が69・3%に上った。政府が「世界一厳しい」とする新基準でも、不安は拭えないということだろう。

 政府は審査合格を安全の「お墨付き」とするのではなく、住民の不安の声に耳を傾けなければならない。