新たな財政健全化計画の策定に向け、政府の経済財政諮問会議で本格的な議論が始まった。来月末には、まとめられる予定だ。
 
 財政再建のため、政府は2020年度に基礎的財政収支を黒字化する目標を掲げている。その実現に、どう道筋をつけるのかが焦点である。
 
 安倍晋三首相は「経済再生なくして財政健全化はない」と、景気拡大に伴う税収増を柱に据えた財政再建のシナリオを描いている。
 
 果たして、そううまくことが運ぶだろうか。
 
 先日の経済財政諮問会議では、18年度までを「集中改革期間」と位置付けて、国内総生産(GDP)比で現在3・3%の赤字を1%前後に縮小する中間目標の設定が提案された。
 
 ただし、これはGDPの名目成長率3%以上が続くことを前提にしたものだ。過去10年間、一度も3%を上回った実績がないのにである。
 
 政府の見通しは楽観的過ぎると言わざるを得ない。
 
 内閣府の試算によると、仮に名目3%以上の成長が実現したとしても、20年度に黒字化するには、9・4兆円の赤字を穴埋めする必要がある。
 
 景気は、世界経済の動向によっても左右される。不確定要素の強い経済成長を当てにするのではなく、歳出削減も着実に進めるべきである。
 
 ところが、個別分野ごとに歳出を抑制する数値目標の設定は見送られた。
 
 さらに、甘利明経済再生担当相は「安倍内閣で消費税率10%から先は想定していない」と明言し、増税の可能性も早々と封印してしまった。
 
 経済成長頼みだけでは、景気が腰折れした場合、リスクが大きいのは明らかだ。
 
 健全化計画策定は昨年11月、首相が消費税率10%への再増税を1年半延期すると決めた際に表明した。
 
 国と地方を合わせた借金は1千兆円規模に達しており、先進国で最悪の水準にある。財政に対する市場の信認を維持するために、表明が必要だった。
 
 だが、昨年12月に米格付け会社、先月には欧州系格付け会社が、財政再建の不確実性を問題視して、それぞれ日本国債を1段階引き下げた。日本財政への視線は厳しさを増しつつある。
 
 財政再建は、先送りすればするほど難しくなる。次の世代へのつけ回しは、決して許されない。歳入、歳出ともに聖域なき改革は待ったなしの状況だ。
 
 自民党内には、高齢化で膨らみ続ける社会保障費の伸びを抑え、所得の高い高齢者に負担増を求めるべきだとの案も出ている。
 
 しかし、来夏に参院選を控えて、国民に不人気な政策には党内から異論が出るのは避けられそうにない。
 
 財政再建の必要性を国民に説明し、理解を得るのは政治の責任である。政治家も国民も、危機的な財政状況に正面から向き合う覚悟が必要だ。