果たして、これで住民の帰還は進むのだろうか。

 自民党の東日本大震災復興加速化本部が、東京電力福島第1原発事故により福島県内に設けられている「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の避難指示を、2017年3月までに解除するよう政府に求める提言をまとめた。近く安倍晋三首相に提出する。

 解除時期を明示することで、住民の帰還を後押しすることを狙ったものだ。

 帰還をめぐって、住民の間では生活インフラや放射線への不安が根強い。避難指示が解除されたからといって、帰還が進む保証はあるまい。

 政府は、年間被ばく線量に基づいて「帰還困難区域(50ミリシーベルト超)」「居住制限区域(20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)」「避難指示解除準備区域(20ミリシーベルト以下)」の3段階の避難指示区域を設定している。

 区域は福島県内の10市町村にわたっており、居住制限区域と避難指示解除区域の人口は計約5万5千人に上る。

 「戻れるなら明日にでも」と帰還を切望する被災者がいる一方で、原発事故から4年が過ぎて、新たな職場や学校がある避難先へ移住を決断した人も増えている。

 病院や商業施設など、暮らしに欠かせない生活インフラの再建は簡単ではない。住宅の傷みも心配だ。そして、放射線による健康被害への不安は拭いきれない。

 昨年4月に避難指示が解除された田村市都路地区では、解除から1年以上たっても人口は事故前の約4割にとどまっている。そうした中での解除時期の明示には、住民の間から「実態にそぐわない」との反発も出ている。

 提言には、本年度から2年間に自立支援施策を集中展開することも盛り込んだ。除染やインフラ整備を着実に進め、住民が地域に戻れるように環境整備を急ぐのは当然である。

 それに加えて、政府は具体的なビジョンを丁寧に説明する必要がある。いくら古里が恋しくても、将来の生活設計を描けなければ、帰還の是非を判断できないからだ。

 東電の精神的損害賠償(慰謝料)に関しては、解除時期にかかわらず18年3月まで支払うように求めた。

 現行は解除から1年後をめどに支払いを終了する仕組みとなっており、解除が早いほど受け取る額が少ない。このままでは、早期解除に向けた住民との協議が進まない恐れも指摘されていた。

 最も放射線量が高い帰還困難区域については、「引き続き地元とともに検討する」としただけで、解除時期などは明示されていない。

 困難区域の避難者は2万4千人余に上る。一番情報を必要としているのは、困難区域の住民であるのを忘れてはならない。

 11万5千人余が今も避難生活を余儀なくされている。かつての暮らしを取り戻せるように、支援を充実させたい。