2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる約8万人収容の新国立競技場(東京都)をめぐって、新たな問題が浮上した。

 国が、フィールド部分を覆う開閉式屋根の設置を大会後に先延ばしするほか、サッカーなどの際にフィールドに向けてせり出す約1万5千席の可動席を取りやめ、仮設で対応する検討に入った。

 着工を10月に控えた今になってである。建設資金の負担をめぐり、国と東京都の摩擦を生む事態にも発展した。

 東京が開催都市に選ばれたのは、日本が国際社会との約束を守り、計画を着実に実行する国という信用と安心感があってのことだろう。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、肝心のメーンスタジアムをめぐる日本の迷走をどう見ているだろうか。イメージダウンを招かないよう、関係者の努力を求める。

 計画変更を検討するのは、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が開閉式屋根などの詳細な設計を進める中で、予定の19年3月までに工事を完了できない恐れが出てきたためだ。新国立競技場を主会場として同年9月に開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)に、支障が出る可能性もある。

 費用面でも、昨年5月時点で1692億円と見込んだ総工費が、建築資材や人件費の高騰で2500億円以上に膨らむとの見方が出てきた。

 下村博文文部科学相は、東京都に建設計画を見直す考えを示し、整備費として約500億円を都が負担するよう要請した。

 突然の変更に、舛添要一知事が「コストの問題と(工期が)間に合わないということだが、計算して予定を立てていたのではないのか」と反発するのも無理はない。

 大会組織委員会の森喜朗会長は、下村、舛添両氏を批判したが、文科省と都だけの問題ではあるまい。

 当初から、イラク出身の著名建築家、ザハ・ハディド氏がデザインした新競技場は巨大過ぎて周辺の景観を乱し、建設費も巨額過ぎるとの批判があった。このため、JSCは当初案から、延べ床面積を約25%縮小し、高さも5メートル低くする修正を行った。

 加えて今回の変更だ。JSCや文科省は、メーンスタジアムの重要性をどう考えているのか。複雑な構造の新国立競技場は、当初から難工事が予想されていたはずだ。

 昨年、基本設計が承認された際、JSCの河野一郎理事長は「(先端)技術のショーケースにしたい」との考えを示した。開閉式屋根や可動席は、JSCが掲げる「世界が憧れる次世代型スタジアム」の柱ではなかったのか。

 下村文科相は来月下旬までに工事計画見直しを終え、新たな概算額を公表するとしているが、行き当たりばったりでは困る。

 日本の信用を保ち、国民が納得する解決策を示してもらいたい。