衆院憲法審査会に参考人として招かれた憲法学者3人全員が、集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案について、「憲法違反」との認識を表明した。

 参考人3人はともに著名な学者であり、その指摘は重く受け止める必要がある。

 憲法は国の最高法規である。これに反する法律が無効なのは、あらためて言うまでもない。法案の正当性が根底から揺さぶられているのだ。

 表明したのは早稲田大の長谷部恭男、笹田栄司両教授と、慶応大の小林節名誉教授である。

 長谷部氏は、集団的自衛権の行使について「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と述べた。

 笹田氏は従来の枠組みを「踏み越えてしまっており、違憲だ」との認識を示し、小林氏も「憲法9条は、海外で軍事行動する法的資格を与えていない」と断じた。

 与党などが推薦した長谷部氏までが「違憲」と言い切ったのは異例である。

 菅義偉官房長官が「違憲との指摘は全く当たらない」と反論するなど、政府、与党は影響の打ち消しに躍起となっている。

 だが、国民が最も聞きたい合憲と主張する論拠については、十分な説明がなされたとは到底言えまい。

 先月末の共同通信社の世論調査では、安保法案への安倍政権の姿勢について「十分に説明しているとは思わない」が81・4%に上っている。

 これは、国民が安保政策の大転換に対して大きな不安を抱いている証拠である。政府は、国民が納得できるまで丁寧に説明する責任がある。

 「憲法違反」の指摘は、参考人からだけではない。法案に反対する憲法学者ら180人以上が廃案を求める声明を出した。この広がりをどう捉えるべきか。「一憲法学者の意見で政府方針は変わらない」(自民党幹部)などと高飛車に出るのではなく、謙虚に耳を傾けるべきだ。

 集団的自衛権の行使は昨年7月、国民的議論のないまま、安倍政権が憲法解釈を変更し、閣議決定したものだ。

 憲法は権力を縛る規範である。時の権力者が都合のいいように解釈を変えることは、断じて許されない。

 政府は法案の必要性として、日本の安全保障環境の変化を挙げるが、その主張は論点がずれている。今回提起されたのは、集団的自衛権そのものの是非ではなく、安保法案の違憲性なのだ。

 国民の生命財産や地域の安定を守るために、集団的自衛権の行使が必要というなら、堂々と憲法改正に取り組むのが筋である。

 小林氏は「国会が多数決で法案を承認したら、国会が憲法を軽視し、立憲主義に反することになる」と警鐘を鳴らしている。

 政府、与党は今国会での成立を急ぐのではなく、廃案も視野に考え直すべきだ。