戦後70年の節目の年に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐって、政府と沖縄が対立を深めていることが、残念でならない。
 
 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が辺野古埋め立てに向けた海底ボーリング調査を停止するよう指示したのに、政府は作業を続けている。沖縄の民意に反するものだ。
 
 政府は夏から埋め立て工事に着手する構えである。
 
 これに対して、翁長氏は来月上旬、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会から報告を受けて、承認取り消しや撤回の判断をする。
 
 翁長氏は、有識者委員会が取り消しを提言しなかった場合でも、「前知事の行為にさかのぼってやるのではなく、その後の事由によって国の公益より、沖縄県の公益が大きければ、『撤回』できる」との考えを明らかにした。
 
 菅義偉官房長官は、翁長氏が辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消しても、移設工事を進める考えを示している。
 
 事態打開の糸口すら見えそうにない。ここに至った原因は、沖縄の声に耳を傾けず、強引に埋め立て準備を進める政府のやり方にある。沖縄と誠実に向き合うべきだ。
 
 翁長氏は訪米して、米政府関係者らに「非民主主義的な形で辺野古での工事が進められている」と遺憾の意を伝えた。全国の世論喚起も含め、あらゆる手だてで、辺野古移設を阻止する構えである。
 
 先月、那覇市で開かれた辺野古移設に反対する「沖縄県民大会」には、約3万5千人が参加。翁長氏は「辺野古に新基地は造らせないとの公約実現に全力で取り組む」と表明した。あらためて不退転の決意を示したものだろう。
 
 翁長氏は「沖縄県にある基地で、自ら提供した基地は一つもない」と言う。時代とともに、基地よりも返還後の経済、雇用効果がはるかに大きくなったとの認識を示し、返還の必要性を訴える。
 
 確かに、国土面積の0・6%にすぎない沖縄に在日米軍専用施設の約74%が集中しているのは、あまりにも酷だ。
 
 辺野古周辺では、移設反対派と海上保安庁の船がにらみ合い、抗議船が転覆する事態も起きた。政府が埋め立て工事を強行すれば、反対派住民の排除をめぐって、流血の惨事を引き起こしかねない。
 
 あの凄惨(せいさん)を極めた沖縄戦から70年の節目である。昔も今も、沖縄県民に、偏った負担と苦しみを押しつける政府であってはなるまい。過去の歴史に鑑み、沖縄の民意をくみ取り、調査を停止すべきだ。
 
 沖縄県議会の社民、共産両党などは、辺野古沿岸部の埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例案を、6月議会に提出する。可決される公算が大きい。
 
 一つ一つの抵抗の意思表示の背後に、無数の民意を見る。後世に禍根を残さないよう、日米両政府に移設計画の再考を求める。