政府が、東京電力福島第1原発の廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)を改定した。2013年6月以来2年ぶりの見直しだ。

 1~3号機の使用済み核燃料プールからの燃料取り出し開始時期を、最大で3年程度遅らせる。

 事故から廃炉の完了まで30~40年とする枠組みは維持したが、放射線量の高さや技術面から、乗り越えるべきハードルは高い。

 プールからの燃料取り出し開始を本年度前半としていた3号機は、17年度に変更した。前回改定時に17年度とした1、2号機はいずれも20年度になった。3基とも22年度までに取り出しを終える。

 改定では、作業スピードを重視してきた従来の方針を転換し、放射性物質の飛散防止や作業員の被ばく低減など、全体のリスクを下げる観点に立った。

 事故原発の廃炉は極めて特殊な、被ばくの危険がつきまとう作業である。人命に配慮した工程の見直しは当然だ。

 水素爆発で原子炉建屋が大破した3号機は、プールのがれき撤去が難航。放射線量も想定通りに下がらず、本年度前半の取り出し開始は不可能になっていた。

 1号機も、放射性物質の飛散防止に時間がかかり、作業機器のトラブルもあって大幅な遅れは避けられない。

 2号機はまだ、具体的な作業にも入れていない。

 だが、工事を急ぎトラブルを誘発すれば、取り出しがさらに遅れる恐れがある。拙速は慎むべきだ。

 困難を極めそうなのが、原子炉から溶け落ちた燃料(燃料デブリ)の取り出しだ。

 格納容器を水で満たし、放射線を遮った後で取り出す「冠水工法」に加え、水を張らない「気中工法」も選択肢とする。

 冠水工法は米スリーマイル島事故で採用されたが、格納容器の漏水箇所の補修が簡単にできないなど、技術的な難しさを克服する必要がある。

 18年度前半までに工法を絞り、21年に取り出しをする。

 とはいえ、いまだに燃料デブリの位置も形状も分からないのが実情である。取り出しに向けては、国内外の技術を結集し、専門家、技術者を大量に投入する必要がある。

 喫緊の課題は、増え続ける高濃度汚染水の対策だ。

 原子炉建屋にたまる汚染水を20年中に全て処理する方針の下、分野ごとに詳細な目標を設けた。建屋への地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」のうち、陸側部分を本年度内に完了させるなどして、地下水の流入量を抑える。

 廃炉で司令塔の役割を担う原子力損害賠償・廃炉等支援機構の強化も盛り込んだ。

 国や東電などは総力を挙げて工程表を着実に実行し、不安と戦う住民たちの期待に応えてもらいたい。

 そのためには、人為的ミスを防ぎ、情報隠しをせずに説明を尽くし、作業を軌道に乗せることが大切だ。