与党が、あすまでの国会会期を9月27日まで大幅に延長した。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の成立を図るためだ。

 平和国家として歩んだ戦後日本の安全保障政策を転換させる法案である。政府、与党は丁寧に論議を積み重ね、国民の疑問に答えなければならない。

 通常国会で戦後最長の延長幅とした背景には、参院送付後、60日以内に採決されない場合に、衆院で再可決して成立させる「60日ルール」を適用しようという意図も垣間見える。

 成立を強行すれば、世論の反発を受けるのは必至だ。

 安保法案をめぐっては、法曹、言論、文化など各界から批判が巻き起こっている。

 中でも、衆院憲法審査会の参考人質疑で、自民党推薦を含む3人の憲法学者全員が「違憲」と指摘したインパクトは大きかった。

 政府は、違憲論の火消しに躍起だが、安保法案に対する疑問の声は日増しに広がっている。

 衆院平和安全法制特別委員会ではきのう、2人の内閣法制局長官経験者が、安保法案を批判した。宮崎礼壹元長官は「行使容認は限定的なものも含めて憲法9条に違反しており、法案を速やかに撤回すべきだ」と指摘した。

 与党は、80時間の審議を採決の目安としているが、大切なのは審議時間ではなく議論の中身である。

 審議を重ねるにつれ、疑念が深まるのは、法案に問題がある証左ではないのか。

 野党は攻勢を強める構えだ。安倍晋三首相と民主党の岡田克也代表との党首討論では、主張が真っ向から対立した。安倍首相は法案について「正当性、合法性には完全に確信を持っている」と述べたが、岡田氏は「とても憲法に合致しているとは言えない。憲法違反だ」と断言した。

 維新の党は、安保法案の対案を提出する方針である。

 対案は、政府が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」の概念を基本的に受け入れる。一方、ホルムズ海峡での停戦前の機雷掃海など経済的危機を理由とした行使は認めない。対案の決定は先送りしたが、政府案に比べて適用を厳格化した内容だ。

 政府、自民党は維新との修正協議を視野に入れているようだが、維新の松野頼久代表は党首討論で「修正協議に応じるつもりは全くない」と明言した。妥協は許されまい。

 共同通信社の最新の全国電話世論調査では、安保法案に反対は58・7%で、先月の前回調査から11・1ポイント上昇した。賛成は27・8%だった。

 安保法案が「憲法に違反していると思う」は56・7%で、「違反しているとは思わない」は29・2%だった。

 半数以上が法案を「違憲」と見る状況を、政府は重く受け止めなければならない。

 延長国会で国民の疑念を払拭(ふっしょく)できないのなら、廃案にすべきだ。