2025年の病院ベッド(病床)数について、全国で1割余り減らす必要があるとする報告書を、政府が発表した。徳島県の31・6%を含め、41道府県に削減を求める内容だ。
 
 年間40兆円に上る医療費を抑制する狙いだが、地域の実情にそぐわない基準の押しつけになってはならない。
 
 過剰な病床は、不必要な入院や長期療養を招き、医療費がかさむ原因になっている。政府は、病棟を介護施設などに転換し、患者には入院医療から在宅医療に移行してもらうことで病床削減を進めたい考えだ
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 地方では核家族化が進み、独居高齢者が増えている。介護型の病床には、医療ニーズがあまり高くない高齢者が長期間入院しているケースが多い。自宅や地域に介護の担い手がいないためで、「社会的入院」と呼ばれ、介護力の低下を病院が代替しているのが現状だ。
 
 そうした中で、在宅で十分な介護を受けられる体制や仕組みがないまま病床を減らせば、家族の負担が重くなる。環境が整うまでは、削減を進めるべきではない。
 
 政府は、全国で119万床が適正な病床数だとし、13年から15万床程度減らすとしている。
 
 人口に対する病床数は現在、地域間で大きくばらついている。9千床にすることを求められた徳島県など、30%以上の削減は9県に上った。増加が必要なのは、都市部の神奈川や東京、大阪など6都府県となっている。
 
 25年には、「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となる。都市部では、慢性的な病気を抱える高齢者が増えるとされている。
 
 報告書は、人口減少や高齢化に向けて、医療の構造を変えるための第一歩として評価できよう。
 
 しかし、病床の削減は民間医療機関の経営に直結しているため、容易ではない。削減方針に強制力はないが、政府は25年に向けて補助金や診療報酬で転換を誘導し、介護サービスとの連携も進めるとしている。
 
 在宅医療に関わる医師や看護師の確保、介護業界の慢性的な人手不足解消も大きな課題だ。
 
 各都道府県は、昨年成立した地域医療・介護総合促進法で義務付けられた「地域医療構想」の策定を急いでいる。徳島県も、県内を東部、南部、西部の三つの地域に分け、25年に必要な病床数の推計を進めている。本年度内をめどに施策の構想案をまとめる予定だ。
 
 今回、政府は都道府県が構想を策定するのに先立って報告書を公表した。都道府県が検討している構想案に一定の枠をはめてしまう恐れがあり、自治体の自由な議論を阻害しかねない。
 
 政府は、医療費抑制ありきではなく、地域の実情に即した医療・介護環境の整備を進めるべきである。