徳島市が、老朽化に伴い4月に休館にした市文化センターの耐震改修を行わず廃館とし、解体することを決めた。

 耐震改修の工事完了まで3年半かかり、新町西地区再開発事業で建てる新ホールの完成予定時期(2018年度末)とほぼ同時期になることなどが理由だ。

 これにより、市内に千人規模のホールがない空白期間は、少なくとも4年に及ぶことになった。市民が文化に触れる機会が損なわれるのは必至であり、文化活動の停滞が懸念される。

 文化関係者や市民から、批判や戸惑いの声が上がっているのは当然だ。こうした状況を招いた市の責任は大きい。

 新ホールの建設には、一部の地権者や市民の間に根強い反対がある。空白期間がさらに長引くことはないのか。

 市には、市民が被る影響を最小限に抑える責務がある。その重さを肝に銘じてもらいたい。

 1963年に開館した文化センターは約1200席を備え、音楽や演劇などさまざまな行事の舞台となってきた。市民だけでなく、多くの県民に親しまれ、近年の利用者は年間約15万人に上る。廃館になれば、市内の大規模な公共ホールはアスティとくしま(5千席)と、あわぎんホール(809席)だけとなる。

 市が行ったセンターの耐震診断では、震度6以上の大規模地震で倒壊の危険性が高いとされた。耐震補強と音響機器などの改修には、約30億円の費用が掛かるという。

 近い将来に発生が予想される南海トラフ巨大地震では、市内は最大で震度7の揺れに見舞われるとされている。センターを使い続けるには耐震化が必要だが、新ホール完成後は廃館が見込まれており、二重投資になりかねない。
 

 問題は、新ホールが予定通りに建設できるかどうかだ。

 現在、新ホールを含む再開発事業の実施主体である再開発組合が、地権者の土地・建物をビルの床や金銭などに置き換える権利変換計画の策定を進めている。

 だが、反対の地権者がいることなどから、権利変換計画の確定時期は、当初見込んでいた今月ごろから11月ごろに先延ばしされた。

 さらに、ビルを支える地中のくいをより深く打つ必要が出てきたため、建設工事にかかる期間も2年から2年半に延長。これらの事情により、完成予定時期は当初の17年度末から1年間延びた。

 権利変換計画を確定させられなければ、完成時期はさらにずれ込むだろう。

 だが、強引に事業を進めることは許されまい。地権者の理解を得るには丁寧な説明を重ねるしかない。

 原秀樹市長は、再開発について「中心市街地の再生のため、必ずやり遂げなければならない事業だ」と述べている。そうであるなら、自らが先頭に立ち、反対する地権者や市民らとの対話に臨むべきである。