東京圏の高齢化対策として、有識者でつくる「日本創成会議」が発表した提言を機に、高齢者の地方移住をめぐる議論が高まっている。
 
 移住の適地として、徳島県の東部医療圏(徳島市など12市町村)など26道府県で41地域が挙がったが、自治体からは歓迎する声がある一方で、「負担の押し付けになるのではないか」との戸惑いも聞かれる。
 
 東京一極集中を解消し、都市部から地方への人の流れを促すという提言の方向性は理解できる。ただ、移住は個人の意思が最優先されるべきであり、こちらにたくさんいるからそちらへ移すという単なる数合わせでは、解決策とはいえない。
 
 今回の提言は、以前から指摘されていながら対策を講じてこなかった行政への問題提起であると同時に、国民に対して、老後をどう生きるかを真剣に考える機会を提供したものと捉えたい。
 
 創成会議は、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県)で今後高齢化が急速に進んで介護需要が急増し、2025年には13万人分の介護施設が不足すると指摘。解決策として、高齢者が元気なうちに医療・介護の受け入れに余力がある地方に移住を促すよう、国や自治体に求めた。
 
 65歳以上の人口は、全国では42年まで増え続ける。しかし、本県は5年後の20年をピークに減少に転じ、その後はハード面でも人材面でも余裕が生まれるとされている。
 
 県は、徳島ゆかりの高齢者に焦点を当てた徳島移住を呼び掛ける取り組みを既に始めている。移住によって雇用の拡大や経済活性化が期待できる。医療・介護環境が整い、自然豊かな徳島での暮らしを選択する人を増やしたい。
 
 だが、課題もある。高齢者を受け入れた自治体で介護保険サービスの利用が増えれば、自治体の負担増を招く。
 
 県は国に対し、介護費用を移住前の自治体が負担する特例制度を広げるよう求めている。高齢者の地方移住を進めるなら、財政措置も同時に講じる必要があるのは当然だ。

 高齢者の中には、長年住み慣れた土地を離れる不安や、子どもや孫の近くで暮らしたいという思いもあるだろう。
 
 実際に移住を決断してもらうには、その土地に住みたいとの強い動機付けが必要となる。子どものそばでいたいのであれば、子ども世帯と一緒に来てもらうのも一策だ。若い世代の移住希望者を掘り起こしてはどうか。
 
 そのためには雇用の場を確保しなければならない。国には、行政機関や企業の地方分散を進める取り組みが求められよう。
 
 内閣府の調査によると、東京在住の50代男性の50・8%、60代男性の36・7%が地方移住の予定があるか、移住を検討したいと答えている。

 地方暮らしの希望者は少なくない。本県に移住してもらうために、徳島を挙げて魅力の発信に努めたい。