政府は、東京電力福島第1原発事故で多大の被害を受けた福島の復興指針を改定し、閣議決定した。

 避難指示の解除時期や賠償支払いの終了期限を示し、避難住民に帰還と自立を強く促す内容だ。しかし、避難住民の置かれた状況は一様ではなく、一律に期限を設定することで、かえって支援の後退を招く恐れもある。

 政府は、避難住民の思いを尊重し、きめ細やかで息の長い支援に取り組むべきだ。

 改定された復興指針は、居住制限区域(年間被ばく線量20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)と避難指示解除準備区域(20ミリシーベルト以下)の避難指示を、来年度末までに解除するとしている。両区域の住民に東電が毎月10万円支払っている精神的損害賠償(慰謝料)は17年度末で一律終了する。

 避難住民は、古里に帰って暮らしていけるのかと、根強い不安を持っている。

 その一つが、放射線による健康への影響である。除染は進んでいるものの、通常の被ばく限度とされる1ミリシーベルトを上回っている場所は多い。特に子育て世代にとって、切実な問題だ。

 ほかにも、病院や商業施設などの生活基盤の復旧、賠償が打ち切られた後の生活費、さらに、ばらばらになったコミュニティーの再建など、心配の種は尽きない。

 居住制限区域と避難指示解除準備区域の人口は計約5万4800人に上る。既に避難指示が解除された地域でも、帰還は進んでいないのが実情だ。両区域の帰還が進むかどうかは見通せない。

 被災地域の商工業者の再建も容易ではない。

 復興指針は、官民合同の新組織を立ち上げて事業者の自立を支援するとした。戸別訪問や相談事業を行い、事業再建に向けた取り組みを来年度まで集中的に実施する。その一方で、営業損害や風評被害の賠償は来年度分で打ち切る方針だ。

 政府が指針を改定した背景には、避難長期化への懸念がある。政府関係者は「早く避難指示を解除しないと戻る人がいなくなる」と危機感をあらわにする。

 しかし、先行きが見通せない中で、避難指示の解除時期や賠償打ち切り期限を示したことは、住民目線に立っていると言えるのか。

 指針改定に合わせるように、福島県は避難指示区域外からの自主避難者への住宅無償提供を、17年3月で打ち切ることを決めた。インフラの整備や除染が進み、生活環境が整ってきたことが理由だ。

 県内外の自主避難者は約2万5千人に上る。期限が来れば、仮設住宅などからの転居を迫られる。帰ろうにも条件の合った転居先が見つからない住民や、放射線の影響を考慮して「子どもが成人するまでは帰らない」と決めている人もいる。

 福島県には、個別の事情にも十分配慮した支援をしてもらいたい。