世界中の行政機関や企業・団体は、いつ起きるかもしれないサイバー攻撃への対処を迫られている。

 インターネットからコンピューターに不正侵入し、情報流出やデータ改ざん、機能障害を引き起こすサイバー攻撃は、不特定多数の個人も巻き込む卑劣なテロ行為である。国を挙げて排除しなければならない。

 日本年金機構がウイルスメールによるサイバー攻撃を受け、基礎年金番号など125万件の個人情報が流出した事件は、受給者らを大きな不安に陥れた。

 事態を重くみた政府は、サイバー攻撃対策として「ホワイトハッカー(正義のハッカー)」と呼ばれる民間技術者の登用を拡充する。

 ホワイトハッカーは、情報システムの防御など高度な専門知識を持つ技術者で、さまざまなハッカーの手口を熟知し、サイバー攻撃の検知や対処に当たる。

 常に情報収集を行い、次々に現れる新たなウイルスをいかに駆逐するか、研究も重ねる必要がある。

 そのためには、優れた人材の確保が急務だ。

 サイバー攻撃対策の司令塔である内閣サイバーセキュリティセンターは、情報技術の国家資格保有者やIT関連企業の社員らを対象に職員を公募し、常勤の任期付き職員として数人を採用。課長補佐や係長級として登用している。

 だが、民間の給与水準が高いこともあり、人材の確保は容易でないようだ。

 政府は、ホワイトハッカーの待遇を改善し、将来的には数十人規模とする意向だ。

 それでも十分とはいえそうにない。2013年度の政府機関に対する不正アクセスは約508万件で、前年度の5倍に上っている。

 米国では、外国政府の関与が疑われるサイバー攻撃が相次ぎ、当局は対応に苦慮している。人事管理局へのサイバー攻撃では約400万人の個人情報が流出した。

 中国のハッカーの攻撃とみられるが、中国政府は一貫して関与を否定している。

 日本でも同様のハッカー攻撃への備えを強めるのは当然である。20年には東京五輪・パラリンピックがある。組織的サイバー攻撃に対抗するには、相当の陣容が必要だ。

 政府は、サイバー空間の安全確保を安全保障上の大きな課題と位置付けている。閣議決定された成長戦略でも、従来の枠を超えた最大限の対策を講じるよう求めた。

 問題は、サイバー関係の技術者が全国で約8万人も不足していることだ。

 技術者の裾野を広げるためには、中・高校生らを対象にした講習会も有効だろう。

 独立行政法人・情報処理推進機構は毎年、若い世代の泊まり込み勉強会「セキュリティ・キャンプ」を開催し、技術を悪用しないようモラル面の講演も行っている。

 こうした取り組みを、各機関でさらに加速させたい。