県の垣根を取り払って徳島と高知の有権者が1人の参院議員を選ぶ。そんな事態が現実味を帯びてきたことに、強い危機感を覚える。

 参院の「1票の格差」是正に向けた選挙制度改革をめぐり、自民党参院執行部が、維新の党など野党4党が提示した「徳島・高知」「鳥取・島根」の合区を含む定数「10増10減」案を軸に、他党と調整したいとの考えを示した。

 各党の協議も合区案を基本に、大詰めを迎えつつある。

 私たちは、地方の声が国政に届きにくくなる合区案は認められないと主張してきた。拙速な結論は避けるべきだ。

 自民党は従来、都道府県単位の選挙区の枠組みを極力維持する観点から、改選2人区の宮城、新潟、長野を1人区として、北海道、東京、兵庫の改選数を1議席増やす定数「6増6減」案を基本にしてきた。難点は格差が最大4・31倍にとどまることだ。

 「6増6減」案に「鳥取・島根」の合区を組み合わせても最大格差は3倍を超える。

 一方、民主、公明両党は、「徳島・高知」など20県を10選挙区に統合する公明党の合区案を両党案として一本化した。格差が最大で1・95倍に収まる点を強みとしている。

 自民党も「6増6減」案では、各党の賛同を得られないとみたようだ。だから、合区が4県で済む「10増10減」案を検討するというのでは、政権党の主体性が問われよう。地方重視の立場から合区に反対する党内の声にも、十分な理があるはずだ。最大格差が2・97倍となることで、「6増6減」より改善するとしてもだ。

 もちろん、最高裁が、格差が最大で4・77倍だった2013年の参院選について「違憲状態」との判断を示したことを、各党は重く受け止めなければならない。だからこそ、公平性を担保する合意を形成すべきなのだ。

 徳島、高知両県の歴史や風土などが違っても、格差是正の大義名分にふさわしい制度の下でなら、共に参院議員を選ぶのは、決して無理なことではない。

 だが、大都市圏の都府県が改選ごとに複数の参院議員を選出する一方で、人口が少ない地方の県域には事実上、参院議員が1人もいない。そんな事態を招きかねない制度が、公平だと言えるのか。

 どうしても合区が必要だと言うのなら、徳島、高知両県などの有権者が納得するだけの、合理的で説得力のある理由を提示してもらいたい。

 どの政党も参院で過半数の議席を持たず、自民党、民主・公明両党、野党4党の案がどう折り合うかは不透明だ。

 大切なのは、党利党略や議員の利害を排し、地域ブロックを設ける比例代表制の導入なども含めた、公平で抜本的な改革の道を探ることだ。

 来夏の参院選まで時間は限られている。それでも、地方の有権者を置き去りにして決着を図れば、将来に禍根を残す。熟慮、再考を求める。