維新の党がきょう、安全保障関連法案の対案を衆院に提出する。
 
 政府案が集団的自衛権行使の要件とする「存立危機事態」に代わって「武力攻撃危機事態」を新設し、個別的自衛権の拡大で対処するというのが柱である。
 
 憲法違反の疑いがある政府案とは隔たりがあり、国民が抱く不安に配慮したように見える。政府案の問題点を浮き彫りにさせる意義もあろう。
 
 ただ、対案も集団的自衛権の行使に当たる恐れがあり、不十分だ。短期間の対案審議を経て、維新が政府案の衆院採決に手を貸すのではないかとの不信感も拭えない。
 
 与野党は政府案と並行して徹底審議し、議論を尽くす必要がある。
 
 対案が掲げる武力攻撃危機事態は<1>条約に基づき日本周辺で日本防衛のために活動している他国軍への武力攻撃が発生し<2>これにより、日本に外部からの武力攻撃が発生する明白な危険がある-と認められる事態と規定した。
 
 政府案は米軍以外の他国軍も対象とし、日本の「存立が脅かされる」明白な危険があることを要件としており、それよりは限定的といえよう。
 
 しかし、日本が攻撃を受けていないのに武力行使ができるとする点は政府案と変わらず、個別的自衛権の範囲内といえるのか疑問が残る。
 
 「明白な危険」の有無を判断するのも時の政権であり、政府案と同じく、範囲が拡大する恐れは否定できない。
 
 そうした点をどう考えるのか、維新はしっかりと説明しなければならない。
 
 対案は中東・ホルムズ海峡での停戦前の機雷掃海など、経済的理由での行使を認めないとした。自衛隊を地球の裏側まで派遣させないとし、他国軍への後方支援の活動範囲も、戦闘が見込まれない「非戦闘地域」に限定している。
 
 いずれも政府案を否定するもので、当然のことだ。
 
 これに対して、政府は対案提出を歓迎し、修正協議に積極的な姿勢を見せているが、とても本音とは思えない。
 
 歓迎しているのは、対案をある程度の時間、審議することで維新が政府案の採決に応じ、与党単独の「強行採決」になるのを避けられると期待しているからではないか。
 
 政府、与党は来週にも政府案を衆院通過させる日程を描いている。だが、国民の理解は得られておらず、採決することは到底許されない。
 
 維新の松野頼久代表や橋下徹最高顧問は、対案が国会で十分に審議されない場合、衆院採決に応じない考えを示している。
 
 その態度が不安視されているのは、維新が先月、労働者派遣法改正案をめぐり、与党との取引に応じて衆院本会議の採決に出席した経緯があるからだ。
 
 今回も同様の行動を取るようなら、党の信用は大きく傷つこう。国民が厳しい目を向けていることを、忘れないでもらいたい。