衆院の特別委員会に続き、またしても国会で強行採決が行われた。

 自民、公明の与党が衆院本会議で、集団的自衛権の行使に道を開く安全保障関連法案を採決し、可決した。

 法案には多くの国民が危惧を抱いている。そうした中で衆院を通過させたことは、憲政史上に汚点を残したと言っても過言ではなかろう。世論を無視した強行採決を厳しく非難する。

 安倍晋三首相は再三、「国民の理解が進むよう努力を重ねる」と述べているが、採決する前に十分な理解を得るべきだ。

 与党が数の力にものを言わせ、反対を押し切って採決に踏み切ったことはこれまでにもあった。しかし、今回は国の将来を大きく左右する安全保障に関わる法案である。

 戦後、日本が長年にわたって掲げ、人道支援や経済協力など地道な活動で世界に認められてきた「平和主義」は、私たちの宝といえる。

 集団的自衛権の行使を認め、地球規模で自衛隊が活動できるようにする法案は、その理念を一変させるものだ。法案が目指す理念が、安倍首相の言う「積極的平和主義」であるならば、到底賛成できない。

 国会の動きに怒りと不安を募らせた人たちが、全国各地で抗議活動を続けている。プラカードに書かれているのは「戦争させない」「憲法9条を壊すな」といった切実なメッセージだ。

 安倍首相は、イラクやアフガニスタンで米国が行ったような戦争に日本が参加することはないと強調している。

 だが、自衛隊の活動範囲や行動内容を拡大、拡充させるのに、戦争に巻き込まれ、戦死者が出る恐れが本当にないと言い切れるのか。

 そんな疑問が、政府の説明を聞けば聞くほど強まっているというのが実情だろう。各種世論調査の結果が、それを表している。

 共同通信社が先月下旬に行った全国世論調査では、安保法案が「憲法に違反していると思う」との回答は56・7%、法案に「反対」は58・7%、今国会での成立に「反対」63・1%と、どれも半数を上回った。

 さらに、法案成立後に自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は73・1%、安倍政権が法案について「十分に説明しているとは思わない」に至っては84・0%に上った。

 複雑で分かりにくい法案にもかかわらず、国民の反対の意思は明確といえる。だが、与党は採決の機が熟したと判断した。あまりに拙速に過ぎよう。

 与党は「60日ルール」の適用も視野に入れているとされる。法案を参院に送付した後、60日を過ぎても参院で採決に至らない場合、否決とみなして衆院で再び採決し、3分の2以上の賛成で可決できる憲法の規定だ。

 9月の会期末までに確実に成立させるため、衆院通過を急いだわけだ。異例のルールを念頭に置かなければならないほど、逆風が強いということである。

 法案の審議は参院に移る。「良識の府」といわれる参院は、衆院での審議を踏まえた中身のある議論で、矛盾や問題点について掘り下げなければならない。

 与党の一員である公明党には、いま一度、支持者の声に耳を傾けるよう求めたい。先の世論調査では、公明支持層の47・2%が法案に「反対」と答え、60・9%が今国会での成立に「反対」している。

 参院での審議では、「平和の党」の存在意義を見せてもらいたい。