再稼働を目指している四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、原子力規制委員会が「審査書」を正式決定し、合格が決まった。
 
 四電は今後、再稼働に向けた動きを加速させるとみられるが、東京電力福島第1原発事故を目の当たりにした国民の、原発に対する不安感は根強い。拙速に進めることは許されない。
 
 伊方3号機の審査では、規制委の指摘を受け、想定される地震の揺れ(基準地震動)を申請時の570ガルから650ガルに引き上げた。しかし、それでもまだ不十分だと指摘する専門家もいる。
 
 新規制基準は福島の事故を受けて設けられた。再稼働を推進したい安倍政権は「世界で最も厳しい」と安全性を強調するが、基準をクリアすれば絶対に事故が起きないと保証しているわけではない。審査合格が再稼働への「錦の御旗」ではないことを、四電は肝に銘じるべきである。
 
 共同通信社が伊方原発の周辺自治体を対象に実施したアンケートによると、原発事故と地震や津波が同時に起き、道路や港が使えなくなる「複合災害」や、避難の遅れにつながる「大規模な交通渋滞の発生」への不安を訴える自治体が目立った。
 
 徳島県内でも「福島の事故が収束していないのに、なぜ再稼働なのか」との声は少なくない。四電はこれらの疑問に対し、丁寧に答える必要がある。
 
 伊方原発は延長約40キロにも及ぶ細長い佐多岬半島の付け根に立地する。原発より西側には約5千人が住んでいるが、重大事故が起きた場合の逃げ道を十分に確保したとは言い難い。
 
 事故で放射性物質が漏れた場合、原発近くの道路を通って避難するわけにはいかない。このため、避難計画では半島の先端にある港から船で大分県などに逃げる想定となっている。
 
 しかし、地震による津波で港が破壊されれば着岸は難しい。海が荒れることもあり得る。陸の孤島になった場合にどう対処するのか。解決しなければならない課題は多い。
 
 四電をはじめ、大手電力会社は電力の安定供給のために原発は欠かせないとの姿勢を崩していない。だが、今夏は原発ゼロでも需給に深刻な状況は生じない見通しだ。
 
 電力需要のピークに対する供給余力を示す供給予備率(8月)をみると、四電は安定供給の目安となる3%を大きく上回る11・2%を確保できるとしている。
 
 全国9社合計でも6・8%あり、数字上は原発がなくても供給は可能だ。そうした状況で、なぜ再稼働を急ぐのかとの批判が上がるのは当然だろう。
 
 規制委の審査合格を受け、今後は地元合意をいかに得るかに焦点が移る。
 
 住民が納得するだけの安全対策が優先されるのは言うまでもない。見切り発車は認められない。