国民は安倍政権に不信感を強めている。
 
 共同通信社が行った全国緊急電話世論調査で、内閣支持率が37・7%になり、前回6月の47・4%から9・7ポイント急落した。2012年12月に第2次安倍政権が発足して以降、最低の数字である。
 
 逆に、不支持率は8・6ポイント増えて51・6%と過半数に達し、初めて支持を上回った。
 
 大きな要因は、平和国家の根幹を揺るがしかねない安全保障関連法案の国会審議だ。国民の理解が不十分なまま衆院通過を急いだ、つけが回ってきたといえる。
 
 安倍晋三首相は数の力に頼るのではなく、謙虚な姿勢で国民と向き合うべきだ。
 
 安保法案には61・5%が反対し、賛成は27・5%。今国会成立は反対が68・2%で、賛成の24・6%を上回った。
 
 安倍政権が安保法案について「十分に説明しているとは思わない」が82・9%に上ったのに対し、「十分に説明していると思う」は13・1%だった。
 
 「憲法に違反していると思う」が56・6%と過半数を占める意味は重い。
 
 何しろ、首相自身が国民の理解は不十分だと認めたのだから、国民が納得するはずもない。与党が、衆院本会議で安保法案を採決したことは「よくなかった」が73・3%で、「よかった」は21・4%にとどまったのも当然だ。
 
 では、なぜ世論の反発を承知で衆院通過を急いだのか。首相は日本を取り巻く国際情勢の変化を挙げ「切れ目のない対応を可能とする平和安全法制が必要だ」と強調するが、それでは十分な理由になるまい。

 与党は参院で過半数を占めていても、野党との議席差が少ない。このため、参院で採決されない場合でも、衆院で再可決できる憲法の「60日ルール」を視野に入れているようだ。
 
 そうまでして今国会成立にこだわるのは、首相が4月の訪米時に安保法案の「今夏成立」を対米公約したことを重く見ているからではないか。
 
 これでは国民が怒るのも無理はない。安倍内閣を「支持しない」理由では、「首相が信頼できない」が27・9%と前回より7・6ポイントも増えた。
 
 これまで、首相は支持率の高さを背景に自民党内の異論を封じ込めてきたが、30%台に転落したことは、議員心理にも微妙な影響を与えよう。強気の政権運営に黄信号がともったといえる。
 
 首相が突然、国民の批判が強い新国立競技場の建設計画を「白紙に戻す」としたことにも、支持率低下に歯止めをかける意図が透けて見える。
 
 国会審議を重ねるほど、各地で安保法案に反対する声が高まるのは、国民が戦争に巻き込まれる危険性を感じ取っているからである。
 
 世論は、首相の独断的な政治手法に警鐘を鳴らした。その声に耳を澄まさなければ、やがて有権者から痛烈なしっぺ返しを受けるだろう。