東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で告訴・告発され、東京地検が2度にわたり不起訴処分にした東電の旧経営陣について、検察審査会が「起訴すべきだ」と議決した。

 「大津波が来る危険性を予見しながら対策を怠っていた」と判断したためだ。

 今後、検察官役の弁護士により強制起訴される。世界を震撼させた未曽有の原発事故の刑事責任が、初めて法廷で裁かれることになった。

 事故では多くの住民が古里や平穏な暮らしを奪われ、今も約11万人もの人たちが避難生活を強いられている。衰弱やストレスなどによる関連死は2千人近くに上り、自殺者も後を絶たない。しかも、事故はいまだに収束の見通しが立っていない。

 プロが不起訴とした判断を一般市民の審査員が覆したのは、多大の被害を出しながら、誰も責任を問われない理不尽さに対する国民の強い怒りを表したものといえよう。

 東電はもちろん、原発再稼働を進めている政府や他の電力会社は、その意味を重く受け止めてもらいたい。

 強制起訴されるのは、東電の勝俣恒久元会長ら3人だ。検審の審査では、事故の原因となった巨大津波の襲来を、事前に予測できたかどうかが焦点となった。

 東電は2008年に、福島県沖で大地震が発生した場合、津波の高さが敷地南側で最大15・7メートルになると試算している。

 だが、東京地検は今年1月、「敷地東側では試算を超える津波が襲来しており、防波堤を建設しても浸水は阻止できなかった」とし、2度目の不起訴処分を決めた。

 これに対して検審は「原発事業者は高度な注意義務を負う」とし、適切な措置を取れば事故を回避できたと判断した。いったん起きれば取り返しのつかない事態となる原発の安全対策に、「想定外」は決して許されないということである。

 国会が設置した事故調査委員会は3年前に「事故は自然災害ではなく、明らかに人災だった」とする報告書をまとめている。

 その中には「歴代の規制当局と東電経営陣が、意図的な先送り、不作為、自己の組織に都合の良い判断を行うことで、対策が取られず事故が発生した」との指摘もあった。住民の安全よりも利益を追求した姿勢を、厳しく指弾したものだ。

 強制起訴はこれまでに8件あるが、有罪確定は2件だけと、検察が起訴した事件より無罪の割合が格段に高く、制度を見直すべきだとする意見もある。

 しかし、市民の感覚を司法に反映させる意義は小さくないだろう。

 今回、裁かれるのは原発の「安全神話」である。巨大津波は予測できなかったのか。事故は本当に避けられなかったのか。法廷で真相が明らかにされるよう望みたい。