安全保障関連法案をめぐり「法的安定性は関係ない」と発言した礒崎陽輔首相補佐官について、安倍晋三首相は続投させると明言した。

 参院特別委員会の参考人招致で礒崎氏が自身の発言を撤回、陳謝したことを受けたものだ。

 しかし、特別委の質疑では野党側に15分しか時間が認められず、礒崎氏の釈明も不十分で到底納得できるものではなかった。

 安倍首相は「私からも注意した」と述べたが、これで十分に対応したとはとても言えまい。

 首相補佐官は、国の重要政策について首相を補佐する役割を担っている。その発言が持つ意味は重く、取り消して謝れば済む話ではない。

 職務を続けさせることに、果たして国民の理解が得られるだろうか。礒崎氏を補佐官に選んだ首相の任命責任も厳しく問われよう。

 礒崎氏は特別委で「法的安定性は重要と認識している」と強調した。その上で「安全保障環境の変化も議論しなければならないことを述べる際に『法的安定性は関係ない』との表現を使ってしまったことにより、大きな誤解を与えてしまった」と語った。

 あたかも、不注意で言い間違えたかのような説明だが、額面通りに受け取ることはできない。

 礒崎氏は問題となった講演の前日にも、法的安定性を軽視するような発言をしていたからだ。いずれも映像が残っており、語り口は滑らかだった。言い間違えたのではなく、本音を披露したと見る方が自然だろう。

 法的安定性とは、ある行為が合法か違法かなど、法律上の規定や解釈が大きく変わらず安定していることを指す。

 政府の要職にある者がそれをないがしろにするなど、あってはならないことだ。このまま続投させるというのなら、安倍政権が法的安定性を軽視していると見られても仕方があるまい。

 礒崎氏は安全保障を担当しており、2013年には、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の政府試案を作っている。それを受けた安保法案の作成でも重要な役割を果たした。

 憲法解釈の変更と安保法案は、ともに多くの学者や元内閣法制局長官らが憲法違反とし、法的安定性を欠くと批判しているものだ。

 政府、与党は、法的安定性は確保されていると主張するが、図らずも担当補佐官の発言によって、説得力が一層弱まったといえよう。

 首相は、礒崎氏を更迭すれば野党を勢いづかせると警戒しているのかもしれない。辞任論が浮上していた公明党も、与党の結束を優先して矛を収めたようだ。

 だが、今回の問題は礒崎氏の発言にとどまらず、安保法案の正当性と法的安定性に対する政権の姿勢が問われているのだ。これで幕引きすることは許されない。