被爆から70年の広島原爆の日を迎えた。広島市の平和記念公園では、「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれる。

 犠牲者の冥福を祈り、平和の誓いを新たにしたい。

 70年といえば、ほぼ人の一生に相当する歳月だ。だが、原爆がもたらした辛苦は今もなお、被爆者らをさいなみ続けている。

 共同通信が全国の被爆者を対象にしたアンケートの記述からは、原爆の非人道性が伝わってくる。

 仙台市の早坂博さん(88)は、長女が41歳で病死したことについて「俺が被爆しているからなのか。こっそり神様に聞いてみたい」と胸の内を明かした。被爆者は自身の病気と闘うばかりか、子や孫の病気に、被爆の影響がないかと、つらい心配をしてきた。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ全国の被爆者は昨年度末で18万3519人(徳島は197人)まで減り、平均年齢は80・13歳と高齢化した。

 被爆者団体などは、医療特別手当の支給要件を定めている原爆症認定制度の抜本的見直しを求めている。厚労省は対応を急ぐべきだ。

 今年は安倍政権が成立を図る安全保障関連法案の国会審議が、国民の論議の的だ。

 注目されるのは、きょうの広島と9日の長崎原爆の日の式典で、広島市の松井一実市長と、長崎市の田上富久市長がそれぞれ行う平和宣言の中身である。

 広島では、安保関連法案に直接言及せず、核兵器廃絶に向けて、世界の指導者らに「人類愛」と「寛容」を呼び掛ける。「広島をまどうてくれ(元通りにしてくれ)」の声に、世界は耳を澄ましてほしい。

 長崎では、被爆だけでなく戦争の記憶の継承も呼び掛ける。田上氏は「平和の理念が揺らいでいるのではないか」との思いから、安保関連法案の慎重な審議を政府や国会に求める。

 安倍晋三首相は、両式典で平和を願う人々の声をしっかりと受け止めてもらいたい。

 被爆者へのアンケートでは、どこかの国が核兵器を使用する具体的な恐れを感じるかどうかを尋ねたところ、79・2%が「感じる」と答え、ロシアや中国、北朝鮮といった具体名を挙げた。

 ロシアのプーチン大統領が昨年のウクライナ政変で、核兵器使用の準備を指示したと発言したのは記憶に新しい。

 オバマ米大統領がプラハで「核なき世界」の核廃絶構想を提唱して、はや6年が過ぎたが、核軍縮の動きは鈍い。

 5月に国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、各国の利害が対立し、最終文書案すら採択できなかったのは残念だ。

 一方、イラン核問題で欧米など6カ国とイランが、外交解決に向けて最終合意したことは評価される。

 核廃絶の思いを広島、長崎から世界に広げたい。