九州電力が、川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し、再稼働させた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、原子力規制委員会の新規制基準に基づく再稼働は初めてだ。

 原発事故で避難生活を送る住民からは「福島の深刻さを分かっていない」との声が漏れる。世論の根強い反対をよそに、再稼働に踏み切ったのは残念である。

 事故の後、電力不足を理由とする政治判断で、12年7月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)が再稼働したが、13年9月に定期検査に入り、国内の全原発が停止していた。

 「稼働原発ゼロ」の約1年11カ月間、電力供給に大きな支障がなかったのに今、再稼働させる必要があるのか。

 川内1号機はあす、タービンと接続して発電と送電を始め、来月上旬にも営業運転を開始する。実に4年3カ月ぶりの運転で、トラブルが起きないか心配である。

 規制委は川内1、2号機の審査で、想定する地震の揺れ(基準地震動)を不十分だと指摘した。九電は最大加速度を申請時の540ガルから620ガルに上げた。想定する最大の津波の高さも約6メートルに引き上げている。

 一方、放射性物質を減らした上で格納容器内の蒸気を排出するフィルター付きベントは、新基準で猶予が認められており、設置されていない。

 周辺の火山の巨大噴火に関しては、原発運用期間中に起きる可能性は十分小さいと判断しているが、火山学者からは「予兆をつかむのは困難だ」との批判がやまない。

 規制委の田中俊一委員長は「基準の適合性を審査した。安全だということは申し上げない」と述べ、審査は原発の安全性を保証するものではないとの認識を示している。

 これで、住民に安心してほしいと言うのは無理である。

 九電は10月中旬には2号機の再稼働を目指す構えだ。

 川内原発では、事故に備えて住民の避難を準備する半径30キロ圏に、9市町の約21万人が暮らす。各自治体は避難計画を策定したが、住民からは実効性を疑問視する声が出ている。計画は万全なのか。

 宮沢洋一経済産業相は「万が一、事故が起きれば、国が先頭に立ち責任を持って対処する」と強調するが、過酷事故は取り返しがつかない。

 政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、30年の原発比率を20~22%とする目標を掲げている。

 安倍晋三首相は「世界最高水準の新基準に適合すると認められた原発を再稼働していく」との考えである。

 それなら、再稼働する原発から出る「核のごみ」をどうするのか。最終処分場の当てもなく「原発回帰」をするのは、あまりにも無責任だ。

 四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)も審査に合格した。だが、川内を前例に次々と再稼働させるのでは、国民の理解は得られまい。