昨年から西アフリカで多数の死者を出したエボラ出血熱への対策は、わが国の喫緊の課題である。流行地域から帰国した人が発熱し、感染を疑われた事例は記憶に新しい。

 塩崎恭久厚生労働相が感染症法に基づいて、国立感染症研究所村山庁舎(東京都)の施設を、エボラウイルスなど特に危険な病原体を扱えるバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設に指定した。

 先進7カ国(G7)でBSL4の施設が稼働していないのは日本だけで、国際連携の観点からも問題があった。新たな拠点が、感染症対策で大きな成果を挙げるよう期待したい。

 村山庁舎の施設は34年前に建設されたが、地元の反対を受け、扱う病原体の危険性が1段階低いBSL3の施設として使われていた。

 転機となったのは、西アフリカでのエボラ出血熱の大流行だ。エボラウイルスへの感染の有無を調べる9例の検査は村山庁舎で行われ、すべて陰性だった。

 だが、感染が確定すると、BSL3の施設では対応できないことから、厚労省はBSL4を「感染症対策に必須の施設」と位置付けていた。

 もちろん、BSL4に格上げするためには、住民の不安解消と安全性の確保が必要になる。

 このため、施設の使用は感染者の生命を守るのに必要な業務に特化する。想定されるのは、感染したウイルスの種類や量の分析などだ。施設を使用する研究者は経歴や経験面での条件を満たす必要があり、健康管理に留意する。

 厚労省は、研究を目的にエボラウイルスなどを輸入することは「検討していない」と強調し「当面は検査目的での利用になる」とする。

 研究所は「震度6強~7程度にも耐えられる耐震性があり、倒壊によりウイルスが外部に漏れることはない」とも言う。

 とはいえ、周辺は住宅密集地であり、「ウイルスに感染したネズミが一匹でも逃げ出したら大変だ」と住民が不安がるのも無理はない。

 住民への説明を尽くし、情報開示を怠らないようにしたい。施設周辺の安全対策を徹底するのはもちろん、テロ対策にも力を入れてほしい。

 施設の老朽化も問題だ。厚労省は移転も念頭に、新たなBSL4施設の確保を検討する。致死率が高いウイルスを扱う以上、最先端の施設が望ましいのは当然だ。

 長崎大も、感染症研究のために、BSL4施設の設置に向けた検討を進めている。

 多くの人が日常的に国境を越える時代に、空港など水際での対処には限界がある。ウイルスの遺伝子の特徴の調査や、病気の仕組み解明などの研究も課題となろう。

 西アフリカのエボラ出血熱は終息に向かいつつあるが、死者は1万1千人を超えた。

 行政や医療関係者、研究者が連携し、ウイルスへの備えを強めなければならない。