スギの人工林を、四季折々に豊かな表情を見せる木々に替えて山を再生し、地域振興につなげる。上勝町の「彩山(いろどりやま)」構想が実現へ動き出した。

 町は、同町福原の月ケ谷温泉を挟み、勝浦川北岸と南岸のそれぞれ約10ヘクタールの山間地を彩山の候補地に選び、現地調査を行っている。年内に構想を具体化した事業概要がまとまる見通しだ。

 県内市町村で人口が最も少なく、「消滅可能性自治体」に挙げられる上勝町の存続を懸けた事業といえる。官民一丸となり実現させてほしい。

 構想は、葉っぱビジネスの生みの親で、第三セクター「いろどり」の横石知二社長が温めていた。

 森林が9割を占める町には、手入れされていない山が多い。これらを、桜や柿、モミジなどが茂る彩山に生まれ変わらせ、日本料理のつまもの「彩」の生産拠点にする。同時に、森林浴を楽しんだり、季節の植物を観賞したりできる観光資源としても活用する。彩山を町全体に広げていく夢も描いているようだ。

 発想はシンプルだが、さまざまな効果が期待できる。

 まず林業が活気づく。山林整備の仕事が増えることで雇用が生まれ、林業従事者も育成できる。

 町内の森林の8割超は人工林であり、放置すると豪雨で土砂崩れや倒木を引き起こす恐れがある。彩山への整備は防災にも役立つだろう。

 何より、彩の安定供給が可能になる。繁忙期に葉っぱや枝が不足して注文に応えられない事態を回避できる。

 また、彩の担い手を養成する場にもなる。全国から彩に関心を持つ人を集めて就業体験を行えば、U・Iターンに結び付くはずだ。

 今や葉っぱビジネスは年間2億6千万円を売り上げ、収入が1千万円を超える農家もある。その陰で生産者の高齢化が進み、65歳以上が8~9割を占める。彩農家の登録戸数は約200戸と変わりはないが、高齢で作業をやめていく人が増えており、担い手の育成が課題となっている。

 ただ、生計を立てる収入が得られないと、新規参入は見込めない。「いろどり」が取り組むアジアやEU圏への輸出戦略で需要を拡大する一方、彩山を整備して生産量を増やし、売り上げを伸ばすことで収入を安定させる狙いもあるようだ。

 問題は資金調達である。町は、国の地方創生関連の新型交付金の活用を念頭に置いているが、十分な配分を受けられるかどうかは不透明だ。

 それならば、町を挙げて事業を推進するため、住民らから資金を募ってはどうか。インターネットで出資を募るクラウドファンディングは検討に値しよう。ふるさと納税の寄付の特典に、樹木の所有権を贈ることも考えられる。

 苗木が成長するまで10年はかかるとみられ、構想実現には相当の年月を要する。息の長い取り組みができる体制づくりも忘れてはならない。