四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の事故に備えた避難計画について、愛媛、山口、大分の3県と関係省庁がつくる伊方地域原子力防災協議会が、「具体的かつ合理的」と確認した。

 しかし、避難ルートが絶たれた場合にどう対応するのかなど、計画には不十分な点が少なくない。協議会が「お墨付き」を与えたことは、理解しにくい。

 政府の原子力防災会議(議長・安倍晋三首相)に近く報告され、承認される見通しだが、これでは住民の不安は解消できまい。

 避難計画は、伊方原発から半径30キロ圏の住民12万4千人が対象だ。事故時の避難ルートや避難先施設を明記したほか、移動に必要なバスの台数なども盛り込んだ。

 伊方原発は「日本一細長い」とされる佐田岬半島の付け根にある。そのため、半島の奥(西側)の住民をどうやって避難させるかが課題となっている。

 計画で最も懸念されるのは、過酷事故の際に半島住民の避難路をどう確保するのかという点である。

 原発より西側には約5千人が住んでいるが、放射性物質が漏れた場合には原発の近くの道を通って東側へ避難することは困難となる。計画では、その際はフェリーを使って大分県側に避難するとしている。

 ところが、住民を運ぶバスやフェリーの事業者との覚書はまだ締結されていない。最も基本的な輸送手段をまず確保すべきである。

 さらに、原発事故と地震や津波が同時に起きる「複合災害」に見舞われれば、道路が寸断され、港が損壊する恐れもある。その場合は、避難できずに、屋内に退避することになる。

 だが、原発より西側には、放射性物質を除去する換気設備付きのシェルター施設は四つしかない。収容人数はわずか470人である。

 風の向きや強さによっては、放射性物質から逃れようとする住民がパニックに陥る恐れもあろう。

 30キロ圏にある愛媛、山口両県の8市町に6月、共同通信が実施したアンケートでは、7市町が「複合災害が特に不安」と回答している。

 伊方町に隣接している八幡浜市の防災担当者は、複合災害が起きた際には「道路がどれだけ渋滞するのかなど、詰められていない部分は多い」と話している。

 伊方原発の3号機は先月、再稼働の条件となる原子力規制委員会の審査に合格し、地元同意に向けた手続きなどが進められている。

 愛媛県の環境安全管理委員会はきのう、原子力規制委の審査は妥当とする報告書を決定した。中村時広知事は今後、報告書を基に再稼働の可否を判断する。

 再稼働は、今冬以降とみられているが、避難計画の実効性が不十分なままでは、再稼働は許されない。