権力の腐敗を防ごうと、首長自らが提案して設けた多選自粛条例をほごにして立候補するケースが、徳島県など全国で目立ってきた。多選がもたらす弊害への認識が薄れてはいないか。強い権限を握る首長の自覚を促したい。

 徳島県内では、阿南市の岩浅嘉仁市長が「多選制限は政治活動を始めた時からの信条」とし、3期を限度とする条例を定めたが、6月に4選を目指して出馬表明した。

 石井町の河野俊明前町長は「全力でやるなら2期以上は無理」との考えから、在任期限を2期とする条例を制定。しかし3月、3期に延ばす改正案を成立させ、4月の町長選に3選出馬し落選した。敗因の一つに条例変更があったとみられている。

 全国的には昨年3月、4選を目指す東京都中野区の田中大輔区長が、在任期限を3期とする自治基本条例の努力規定の削除を提案し、物議を醸した。今年8月の埼玉県知事選では、上田清司知事が3期までとする多選自粛条例に背いて4選出馬した。

 2人とも当選したものの、投票率は中野区長選が29・49%、埼玉県知事選は26・63%。これで有権者の信任を得たと言えるだろうか。政治への不信感や諦めを増幅させているとしか思えない。

 多選自粛条例を定めた首長に共通するのは、初出馬の際に多選制限を公約に掲げたことである。その公約に基づいて設けた条例を自らの多選のために覆す姿勢は、政治家としての信念を疑わせる。有権者の耳目を引くためのパフォーマンスだったと批判されても仕方なかろう。

 多選の問題は古くから論じられてきた。国会では1954年以降3回、知事らの多選禁止法案が出された。いずれも廃案となったが、その根底には、権力は腐敗しやすいという懸念がある。長期政権となれば、行政の硬直化や人事の偏向、業界との癒着に陥りやすい。

 90、2000年代には多選首長の不祥事が相次いだ。これを受け、03年に東京都杉並区が全国で初めて多選自粛条例を制定。以来、条例を設ける自治体は10を超えた。

 ただ、多選の弊害を防ぐ方策はほかにもある。議会が首長や行政を厳しく監視することだ。これは二元代表制の一翼を担う議会の役割である。

 問題は、その議会の存在感が薄いことだ。監視どころか、首長とのなれ合いやオール与党化も目に付く。阿南市では、市議が岩浅市長の4選に道を開くため、多選自粛条例の廃止を提案し可決した。これでは、二元代表制が機能しているとは言えないのではないか。

 今春の統一地方選では、飯泉嘉門徳島県知事をはじめ、4選に挑んだ知事4人全員が当選した。政治家の人材難から、多選の傾向が強まるとの見方もある。

 多選の弊害を防ぐためには、議会がチェック機能を十分に発揮することが重要だ。