沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、国と県の集中協議が決裂に終わった。
 
 残念ながら、当初の予想通りである。辺野古移設を「唯一の解決策」とする国と、反対する県の主張が、容易に折り合うはずもない。
 
 それでも、8月10日からきのうまでの1カ月間、関連工事を中断して協議した意味は小さくない。双方が新たな対話の枠組みを設置することで合意したのは、一つの救いといえる。話し合い解決の努力を惜しんではならない。
 
 政府は、辺野古移設工事を再開する構えだが、強引なやり方は慎むべきだ。
 
 安倍晋三首相と翁長雄志(おながたけし)知事が出席した集中協議の最終会合でも、双方の主張は平行線をたどった。
 
 安倍首相は「辺野古移設は、あくまでも日米合意が原点だ。一刻も早く普天間の危険性除去を進める必要がある」と強調。沖縄振興費を2021年度まで毎年3000億円以上確保する約束を履行するとも訴えた。
 
 これに対し、翁長氏は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認について「瑕疵(かし)がある」と明言した。「首相は『日本を取り戻す』と言うが、その中に沖縄は入っているのか」と問い詰める一幕もあった。
 
 翁長氏の厳しい指摘は、政府に不信感を抱く沖縄県民の声を代弁したものだろう。
 
 菅義偉官房長官が、12日にも終了する県の辺野古での潜水調査後、移設関連工事を再開する意向を伝えると、翁長氏は「(辺野古移設を)あらゆる手段を使って全力を挙げて阻止する」と強調した。
 
 翁長氏が埋め立て承認を取り消せば、どうなるか。
 
 沖縄防衛局が国土交通相に対し、知事の処分取り消しを求める審査請求と、処分の効力を一時的に止める執行停止を申し立てる可能性がある。
 
 執行停止が認められて国が移設作業を継続すれば、県が作業停止を求めて国を提訴する事態も予想される。そんな泥沼の戦いは回避したい。
 
 辺野古の海で、作業再開などをめぐって、国と反対派の船舶が衝突する事態も起こしてはならない。
 
 翁長氏は、辺野古移設の賛否を問う県民投票も検討しているようだ。
 
 政府は、協議を通じて真摯(しんし)に沖縄と向き合ったと胸を張れるだろうか。民意を置き去りにするのなら、沖縄との対話は世論を意識したポーズだったとのそしりは免れまい。
 
 県も沖縄振興予算の確保では国の協力を求めた。集中協議の期間中、政府の16年度予算概算要求で、振興予算が15年度比で90億円増額されたのは成果だった。
 
 だが、県の移設反対が条件闘争でないことは、協議で明らかになったのではないか。
 
 政府が埋め立てを強行すれば、沖縄との関係修復は極めて困難になる。辺野古以外の選択肢も念頭に、接点を見いだす努力を重ねるべきだ。