全ての国民に12桁の番号を割り当てるマイナンバー制度が、来年1月から運用される。来月には個人番号の通知も始まる。

 制度には、行政機関の事務が効率化されるといった利点がある半面、情報流出などへの懸念が消えない。国民の理解は進んでおらず、行政や企業の準備も遅れているのが現状だ。

 導入へ旗を振ってきた政府は、情報漏えいの防止に全力を挙げ、国民の不安払拭に努めなければならない。

 制度の導入で政府が目指すのは、脱税や年金の不正受給を防ぎ、公平・公正な社会にすることだという。

 具体的には、行政機関がばらばらに管理している個人情報を共通の番号で結びつけ、情報の把握や照会を容易にして事務をスムーズにする。国民には、行政手続きが簡単になるメリットがある。
 
 来年1月から運用されるのは、税と社会保障、災害関連の3分野である。2018年からは金融機関の預金口座にも適用される。当面は任意だが、政府は21年をめどに義務化を目指す。健康や医療分野など、利用範囲はさらに拡大しそうだ。

 国民の生活に密接に関係する制度なのに、周知が進んでいないのは問題である。

 内閣府が7~8月に行った調査では、内容を知らないと答えた人が56・6%に上った。メリット、デメリットを含めて、政府はしっかりと説明しなければならない。

 最も不安が大きいのは、情報流出の恐れがあることだ。

 利用範囲が広がり、扱う部署が増えるほど、漏えいのリスクは高くなる。日本年金機構の不祥事で、公的機関の情報管理のずさんさが浮き彫りになったばかりである。

 にもかかわらず、個人番号を管理する市区町村の安全対策は心もとない。共同通信が今月上旬までに実施した全国アンケートによると、60%の自治体が不安を感じていた。

 予算や専門職員の不足を訴える声が多く、国からの情報提供が不十分との指摘も目立った。情報システム改修への財政措置など、政府は早急に対策を打ち出すべきだ。

 従業員の番号の収集・管理が必要になる企業も、対応が遅れている。東京商工リサーチが6~7月に実施した調査では、準備が完了したのは2・8%にとどまり、90%近くが「対策を検討中」「未検討」とした。

 準備には1社当たり100万円以上掛かると推定され、特に中小零細企業には重い負担となる。政府の支援が求められよう。

 セキュリティーの強化は急務だが、サイバー攻撃の技術は高度化しており、情報漏えいを完全に防ぐのは難しいとされる。万が一、流出した場合の被害拡大防止策や被害を補償する仕組みも、政府の責任で整える必要がある。

 課題は山積している。運用開始ありきで、見切り発車することは許されない。