日本や米国、オーストラリアなど12カ国による環太平洋連携協定(TPP)の交渉が、大筋合意に達した。

 米国などが交渉を開始して5年半、日本が参加してから2年余り。各国の利害が複雑に絡み合い、長い曲折を経ての合意である。

 協定が発効すれば、国内総生産(GDP)で世界の4割を占める巨大経済圏が誕生し、圏内の貿易や投資が活発化する。

 自由な貿易の促進は、資源の少ない日本にとって利点が大きい。これを追い風とし、成長力を取り戻す原動力にすることが大切だ。

 ただ、市場開放には懸念も強い。「聖域」としたコメ、牛・豚肉、麦など農産物の重要5項目をめぐり、米国などに大幅に譲歩したためだ。

 コメについては、高関税を維持する代わりに無関税輸入枠を新設。発効から段階的に増やし、13年目に米国から7万トン、オーストラリアから8400トンを輸入するとした。

 米価はコメの消費減少で下がっており、海外産米が流入すれば、農家の収入をさらに圧迫する。

 これに対して政府は、備蓄米を増やすなどの対策を検討しているが、コメが余る状況は解消しない。ブランド化の推進といった需要拡大策が急がれる。

 牛・豚肉の関税は徐々に引き下げ、小麦は関税に相当する「輸入差益」を削減するとした。乳製品ではバターなどの低関税枠を新設する。輸入が増えることになり、関係農家への打撃は避けられまい。

 政府は「TPP総合対策本部」を近く設置する。

 農業対策では、コメを部分開放した1993年の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンドの合意後、6兆円を費やしながら、成果を得られなかった経緯がある。

 求められるのは、予算のばらまきではなく、農業の体質を強化することだ。産品ごとの影響を精査し、有効な手だてを打つ必要がある。

 農業とは対照的に、工業製品の関税撤廃では経済界の期待が大きい。地場産業の底上げになるともされる。

 だが、安価な海外製品が流入することに、先行きの不透明感を訴える中小企業は少なくない。大企業だけでなく、中小零細に目を向けた、きめ細かな支援策を求めたい。

 TPPへの不安が拭えないのは、これまで交渉内容が伏せられてきたためでもある。政府は、協定のメリットとデメリットを国民にしっかりと説明しなければならない。

 TPPには、存在感を強める中国をけん制する思惑もある。広範な分野で統一ルールを決め、中国の動きを封じる狙いだ。

 一方で、日本は中国や韓国、東南アジア諸国など、16カ国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉も進めている。TPPをてこに、この枠組みづくりも促進したい。それが東アジアの平和と安定にもつながろう。