全国の児童相談所(児相)が昨年度に対応した児童虐待の件数が、8万8931件で過去最多となった。1990年度の統計開始以来、24年連続の増加で、初めて8万件を突破した。

 徳島県内でも、3カ所のこども女性相談センターに、前年度を241件上回る710件の相談や通報が寄せられた。これも過去最多である。

 虐待通告の対象を広げたことが件数を押し上げたとされているが、事態は深刻だ。

 虐待は、子どもの心身に大きなダメージを与えるばかりか、命まで奪うケースもある。行政と地域が連携し、子どもを救う取り組みの強化を急がなければならない。

 厚生労働省によると、虐待件数は全国207カ所の児相が対応した事例を集計したもので、前年度比で1万5129件(20・5%)増えた。

 要因について、虐待された子どものきょうだいも心理的虐待を受けた恐れがあるとして対応したためとした。

 さらに、子どもの前で配偶者らに暴力を振るう「面前DV」で警察から通告が増えたことも挙げた。

 ただ、約8万9千件は児相が把握したケースだけで、氷山の一角にすぎないとの見方もある。

 増える虐待に対応するには、行政の体制強化が欠かせない。

 現在は、児相と市町村が虐待の通報先になっているが、役割分担が曖昧だ。互いに相手が対応すると思って、対応が後手に回るケースもあるという。

 厚労省は、役割の明確化を目指し、児童福祉法や児童虐待防止法の改正に乗り出す。具体的には、児相が子どもの保護、市町村は親子支援などを想定している。

 大切なのは、各家庭の養育状況に関する情報を、児相と市町村が共有することだ。支援や保護の緊急性を判断するために、同一基準をつくるなどして、連携の質を高める工夫が求められる。

 児童の保護などに当たる児童福祉司の不足も問題だ。

 厚労省の専門委員会は、全国の児相が2013年度に対応した虐待件数が、1999年度と比べて約6・3倍になったのに、児童福祉司は2・3倍にしか増えていないと指摘している。

 児童福祉司の配置は、児童福祉法の施行令で「人口4万~7万人に1人が標準」と規定されており、全都道府県で配置基準を満たしている。

 だが、1人で年間60件以上の事案を抱える児童福祉司もおり、負担が重過ぎるとの声がある。配置基準を見直すべきである。

 虐待の芽を摘む方策も欠かせない。

 13年度に虐待死した子どもの4割強は0歳児である。被害児の実母は、地域との接触がなく、育児への不安や養育能力の問題を抱える場合が少なくない。妊婦の段階から支援し、社会的孤立を防ぐ取り組みが必要だ。