政府、与党が秋の臨時国会の召集に難色を示している。

 安倍晋三首相の外国訪問が相次いで予定され、日程が立て込んでいることや、重要法案が少なく、必要性が乏しいというのが理由だ。

 とんでもない話である。発足したばかりの第3次安倍改造内閣が何を目指すのかなど、国会で議論すべき課題は山積している。

 民主党など野党はきょう、憲法の規定に基づいて召集を求める方針だが、与党は、要求されても見送る構えだ。これでは憲法無視、国会軽視ではないか。

 秋に臨時国会が開かれなければ2005年以来で、極めて異例である。日程が窮屈というなら、なおさら早く召集し、議論を始めるべきだ。

 首相がまず行わなければならないのは、「新三本の矢」と「1億総活躍社会」について、所信表明などで分かりやすく説明することだ。

 内閣改造に当たって提唱したものだが、具体的に何をどうするのか。1億総活躍とは一体何なのか。知りたいことは多い。首相は、論戦を通じて国民の疑問に答えなければならない。

 環太平洋連携協定(TPP)交渉では、コメなど農業重要5項目の品目のうち約3割、農林水産物全体では約8割の品目の関税が撤廃されることが明らかになった。

 関係農家の懸念は強い。5項目を関税撤廃の例外とするよう求めた国会決議との整合性も問われる。

 政府は影響の有無や大きさを国会で丁寧に説明し、速やかに対策を打ち出すことで、不安の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ。

 新閣僚には、早くも「政治とカネ」などの問題が浮上している。

 森山裕農相と馳浩文部科学相は、それぞれ自らが代表を務める自民党支部が、企業から不適切な献金を受けていた。島尻安伊子・沖縄北方担当相は、自らの名前と顔写真が入ったカレンダーを選挙区内で配っていた。

 これらを野党が国会で追及するのは当然である。召集を拒み続ければ、逃げていると見られても仕方あるまい。

 安全保障関連法の成立を受け、政府は国連平和維持活動(PKO)での「駆け付け警護」について、自衛隊が武器使用できる状況などを定めた部隊行動基準(ROE)の改定作業を本格化させている。

 武器使用基準の緩和は、憲法で禁じられた「海外での武力行使」につながる恐れがある。国会で十分な議論が必要なのは言うまでもない。

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題や、軽減税率の在り方なども重要な課題だ。

 先の国会で与党は、安保関連法を成立させるため、95日間という戦後最長の会期延長を断行した。それが今度は、国会の慣行に反して、召集しようとすらしない。まさにご都合主義ではないか。

 議論を避けようとする姿を国民はどう受け止めるだろうか。よく考えてもらいたい。