米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設が計画される名護市辺野古沿岸部で、政府が、埋め立ての本体工事に着手した。

 沖縄の反対を押し切っての着工に、反発が強まっているのは当然だ。民意を無視した工事が許されるはずはない。

 国と県の争いが法廷闘争に持ち込まれる可能性が強まったのは残念である。政府は工事を中止し、沖縄の声に謙虚に耳を傾けるべきだ。

 沖縄防衛局は当面、移設先に隣接する米軍キャンプ・シュワブ内の陸上部分で、護岸造成に必要な資材の置き場や仮設道路を整備する。中断していた海底ボーリング調査関連作業も再開した。

 工事開始は、翁長雄志(おながたけし)知事が前知事の埋め立て承認を取り消した効力を、石井啓一国土交通相が行政不服審査制度に基づき、停止したためだ。

 翁長氏は、沖縄防衛局が申し立てた審査制度は一般国民の救済が目的で、防衛局に訴えの資格はなく、国交相の効力停止決定も違法だと主張。第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出た。

 県は、申し出が却下された場合などには、承認を取り消した効力の回復を求めて高裁に提訴する方針だ。

 一方、政府は埋め立てに明確な法的根拠を得るため、承認取り消し処分を翁長氏に代わって正式に撤回する「代執行」の手続きに入った。訴訟を起こす構えである。

 国と県が全面対決し、法廷闘争に突入する。そんな事態を誰が望もうか。

 とはいえ、解決策も見当たらない。国と県の1カ月の集中協議も物別れに終わった。

 安倍晋三首相は集中協議の最終会合で「辺野古移設は、あくまでも1996年の日米合意が原点だ。一刻も早く普天間の危険性除去を進める必要がある」と訴えた。

 だが、思い出してほしい。そもそも、96年の日米の普天間返還合意は、前年の米兵による少女暴行事件で反基地感情が高まる中で成立した。地元への手厚い配慮と同意が必要なのは当然である。

 翁長氏は、政府が前知事に約束した「2019年2月までの普天間運用停止」の履行も求めている。

 日米両政府は、代替施設の建設には9年が必要と試算する。米国は、移設が完了した後で普天間飛行場を閉鎖する方針だ。

 意見が擦れ違う中で、気になる動きもある。政府が名護市の辺野古、豊原、久志の3区に振興費を直接支給する方針を固めたのである。

 移設に反対する稲嶺進市長が10年に就任して以来、米軍再編交付金の支給がなく、地域支援は停滞。3区長らは5月、政府側との懇談会で、移設受け入れ条件として、インフラ整備などを求めていた。

 国が首長の頭越しに地域の事業を財政支援するのは異例だ。地元を分断する狙いが明白な「アメとムチ」の手法には、賛成できない。政府は強硬姿勢を改めるべきだ。